激ニブ星の恋人?
その三、
パラシュートは、森の中の木のない地面に着地した。
あたりには他に人はいない。
こういう地をわざと選んで降りたのだろう。
銀時は感心しながら、パラシュートの下から出た。
近くで、桂がパラシュートを片づけている。
その様子を眺める。
片づけ終わると、桂がこちらを見た。
眼が合う。
桂の口が開かれる。
「大丈夫か?」
傷のことだろう。
なにしろ、こちらの身体はボロボロに近い。
だが。
「ああ、大丈夫だ」
軽い口調で答えた。
見た目から桂が想像しているのよりは、痛みはマシだろうと思う。
なにしろ、この国の者と比べると治癒が異様に早いので。
しかし。
「そーゆー、テメーはどーなんだ」
桂の身体は頑丈なほうだが、治癒にかかる時間はこの国の者と同じだ。
あたりまえのことながら。
「大丈夫だ」
短く桂は答え、視線を転じた。
「それでは、行くか」
この場から去るためだろう、身体の向きを変える。
銀時も動く。
歩きだし、桂のほうに行く。
一気に、距離を詰めた。
桂の肩をつかみ、こちらを向かせる。
驚いたように眼を大きく開くのを、見た。
次の瞬間には、腕の中におさめる。
「心配、した」
そう告げ、想いのままに、強く抱きしめる。
似蔵に髪の束を見せつけられたときのことを思い出していた。
だから、自分で自分を止められない。
「銀時」
腕の中で、桂が言う。
「俺がやられるわけがなかろう」
「わかってるさ、そんなこと。だが、万が一ってこともあるだろうが」
似蔵に髪の束を見せつけられて、あんなヤツに桂がやられるわけがないと強く思いながら、しかし、やはり不安だった。
生きているその姿を見るまでは、ずっと不安だった。
「……すまない」
「テメーが謝ることじゃねェだろ」
「いや、なんの連絡もしなかったからな」
「どうせなんか事情があったんだろ」
深い傷を負って動けなかったから、とか、巻きこみたくなかったから、とか。
「それに、無事だったからいい」
無事というには、深い傷を負っているので、合っていない気もする。
だが、生きていて、これだけ動けるのなら、充分だ。
そのことに、感謝すらする。
「桂」
そっとささやくように言う。
「俺はおまえが好きだ」
さらに続ける。
「だれよりも」
ふと、胸に桂の重さを感じた。
桂がよりかかってきたのだ。
一瞬、心が躍った。
しかし、思い直し、桂の身体を抱えるようにして、地面に腰をおろす。
その顔を見た。
まぶたが閉じられている。
眠っている。
ハァ、とため息をついた。
やっぱりかと思う。
こんなことは、初めてではない。
なにかひどく疲れることがあったあとに、張り詰めていたものが一気に崩れ去ったように、電池が切れたように、桂が眠ってしまうことが過去に何度かあった。
だから、慣れている。
桂を横抱きにして、立ちあがった。
相変わらず、桂は眠っている。
さっきの告白も聞いてなかっただろう。
しかし、気分は沈んでいない。
むしろ明るい。
生きていて、こうしてそばにいるだけで、充分だから。