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激ニブ星の恋人?

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第九話 過去回想 雪山で遭難でお約束?



天人軍との戦いで、銀時は所属している攘夷軍から桂とふたりでおとりとして飛び出し、天人兵の追撃に応戦しつつ駆けているうちに山に入った。
もう天人兵は追ってこない。
しかし、問題があった。
それも大問題だ。
天候はもとから良くなかったが、山に入ったあたりから荒れるようになり、今は最悪である。
吹雪いていて、視界が真っ白という状況だ。
このままだと死ぬ。
そう銀時は思った。
雪洞を作ってそこに避難するかと考えたとき、白い世界の中に、違う色の物が見えた。
小屋だ。
銀時は眼を見張る。
思わず、歩く足を止めた。
隣にいる桂も立ち止まったようだ。
そちらのほうを見る。
すると、桂はうなずいた。

小屋に逃げこむように入った。
雪まじりの暴風を押し返すようにして戸を閉めると、ほっとした。
外では、獲物を失ったことに腹をたてているように風が鳴き、小屋をガタガタと激しく揺さぶる。
「ちょうどいいところが見つかって、良かったな」
桂が言った。
けれど、その表情は堅く厳しい。
吹雪の中で凍りついてしまったのが、まだ溶けないのだろう。
「あばら屋だけどな」
銀時は返事した。
冗談のように言うつもりだったが、凍えているせいで、口調は軽くならなかった。

しかし、寒い。
外にいるのと比べれば、はるかにマシだろうが、寒いものは寒い。
着ているものが雪で濡れていて、それが身体をいっそう冷やす。
そんなわけで、お互い、あたりまえのように、どちらからともなく、身を寄せ合って座っていた。

深刻な状況である。

だが。

気分が重くなって当然の状況であるのに、銀時はドキドキしていた。

この状況って。

この状況って、もしかして、あのお約束の……!?

濡れたものを着ていても身体は冷えるだけ、だから、着ているものを脱いで、お互いの肌を重ねて温め合うという、雪山で遭難したときのお約束の状況では……!?

それは、つまり、桂と裸で抱き合うということ。

このかなり厳しい状況が、その口実になってくれる……!

さらに、身体を温めるなら、もっといろいろしたほうがいい。
あれとか、これとか。
激しい運動とか。

そんな不埒な想像をして、鼻血が出そうになる。

いきなりそういうことをするよりも、ちゃんといろんな段階を経てから、そういうことをしたほうがいいのはわかっている。
だが、自分としては段階を踏みたくても、いつも一番最初の入門の段階でつまづいていて、先に進めない。
告白をしたのに気づいてもらえないから、どうしようもない。
いっそ既成事実を作ってしまえば……!
もちろん、責任は取るつもりだ。
同じ男であるので結婚は無理としても、事実婚で、生涯をともにすごす。
オイ、おまえ攘夷志士だろう、なに、明るい未来予想図を思い描いているんだ。
そんなツッコミが入りそうだ。
しかし!
自分は攘夷志士であるまえにひとりの男だ。
それに、攘夷志士歴よりも片想い歴のほうがはるかに長いのだ……!

というわけで、いーよな?

「桂」
胸を高鳴らせ、しかしそれは顔にも声にも出さないようにして、すぐそばにいる桂に話しかける。
「このままじゃ凍死しちまうかもしれねェ。もっと温かくなることしねェか?」
だが。
「……」
返事がない。
どうやら眠っているようだ。

「ええーッ!」
声をあげた。
それでも、桂は眠っている。
銀時は、ハッとする。
そういえば、過去に何度かこういうことがあった。
疲れが溜まりに溜まると、桂は突然眠ってしまって、しばらくのあいだは呼びかけても揺さぶっても起きなくなるのだ。
「えええええーッ!!」
さらに大声をあげた。
だが、それでも、桂は眠っている。

ガラガラと音をたてて、銀時の夢が、いや、妄想が崩れ去っていく。

銀時は肩を落とした。

しかし。
ふと、あることが頭をよぎった。

雪山で遭難。
そんなときのお約束は、もうひとつある。

例。
一緒に遭難した親友が写真を取り出す。
その写真には女性が写っている。
親友は言う。
「下山したら、彼女と結婚するんだ」
そして、優しく笑う。
だが、その身体がゆらりと傾ぎ、まぶたが重たげに閉じられる……。

死にフラグというやつである。

「眠るなー! 死ぬぞーー!!」
銀時は想像して、あせり、桂の肩を激しく揺さぶった。
それでも桂は眠っていた。

翌朝。
昨日の大荒れの天候が嘘のように空は晴れ渡っている。
「銀時、良い天気だぞ」
一晩中なにがあっても眠り続けていた桂は、すっかり元気を取りもどしたらしい。
「早く出発して、皆と合流しなければならんな」
そう話しかけてきた。
「……銀時、どうした、元気がないな」
桂は小首を傾げる。
「元気なんかあるわけねーだろ」
げっそりとやつれた表情で、銀時は言い返した。
一晩中、どうにかして桂を起こそうとがんばったのだ。
しかし。
「そうか、戦や登山で疲れきっているんだな」
そんな銀時の苦労に気づくことなく、桂は違う方向に納得していた。









作品名:激ニブ星の恋人? 作家名:hujio