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激ニブ星の恋人?

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第二話 過去回想 初めての



木々の青葉が明るい陽ざしを照り返している。
梅雨もまだな初夏ではあるが、汗ばむような陽気だ。
銀時は松陽とともに畑仕事をしたあと、もう少し続けると言う松陽を畑に残して、家に帰ることにした。
松陽が続けるなら、自分も続けたほうが良かったかもしれない。
ふと、そう思った。
なにしろ自分は松陽に拾われて、衣食住を与えられている身である。
これから帰るのは、自分の家ではない。
松陽の家であって、そこに住まわせてもらっているだけだ。
などと言ったら、松陽は怒るか悲しい顔をするかのどちらかだろう。
決して喜ばない。
それが、最近、わかってきた。
だから、いいんだ。
そう思って、銀時は歩く速度が落ちていたのを、あげる。

家が見えてきた。

簡素な冠木門を通りすぎ、しばらくして、家の中に入る。
家の中は影が落ちて、少し涼しい。

八畳間に足を踏み入れると、そこに銀時と同い年ぐらいの少年がいた。
桂だ。
この家で松陽は塾を主宰していて、桂はその塾生だ。
松陽の教えを学びにきたのだろう。
しかし、あいにくと、松陽と自分は畑仕事に出ていて、他の塾生はまだだれも来ていない。
だからだろうか、桂は畳に横になって眠っている。

その近くへと銀時は行く。

いきなり大声を出して、驚かせてやろうか。
そんなイタズラ心が湧きあがる。
銀時は桂のそばに静かに腰をおろした。

近くから桂の顔を見おろす。
そのうちに、イタズラ心が消え去った。

桂は一番早く銀時に話しかけてきた塾生だ。
親に捨てられ、ひとりで放浪し、松陽に拾われたばかりの頃の銀時は、他人を寄せつけない雰囲気を放っていた。
それでも、桂は話しかけてきた。
銀時にとっては、生まれて初めてできた友達である。

そして、桂は少年なのに少女と見間違うような、それも美少女といっていい容姿をしている。

その寝顔に眼が引き寄せられる。

引き寄せられたのは眼だけではない。

上体を傾け、手のひらを畳につく。

その寝顔のほうに、顔を近づけていく。

心臓がやけに大きな音をたてて鳴っている。

もう、桂の顔はすぐそばにある。

そのとき。

桂が眼を開けた。

「……ぎんとき?」

銀時はぎょっとする。
さあ、どうすればいい。
この状況をどう説明すればいい。
あせって、しかし、逆に動けなくなる。

一方、桂は銀時の動揺もこの状況も気にした様子はない。
ぼやーっとした眼差しを銀時に向けて、言う。
「銀時、おまえの顔、間近で見ると、へのへのもへじに似てるな」

「へのへのもへじ……!?」
銀時は叫び、上体を起こす。
そして、手で自分の顔をさわる。
俺の顔は、あの、へのへのもへじに似てるのか!?
あの、どこからどー見てもマヌケにしか見えない、アレに似てるのか!?
自分の顔は鏡や水に映ったときにしか見ていないから、もしかしたら、それは自分の都合の良いように見ているだけであって、他人から見たら違うのかもしれない。
それが本当だとしたら、かなりの衝撃的事実である。

激しく動揺する銀時の背後で、桂は身体を起こす。
両手を高くあげて伸びをし、大あくびした。


もちろん、桂は単に寝ぼけていただけだった。
しかし、その後しばらく、銀時は他人に顔を間近で見させないようにしていた。







作品名:激ニブ星の恋人? 作家名:hujio