激ニブ星の恋人?
長いあいだずっと親友だと思っていた相手が、自分に対して恋情を抱いていた。
そんな相手に、どう接すればいいのか。
思いあまって、偶然会った高杉に相談したら、前向きに考えてやれと言われた。
が。
しかし。
前向きに考えるって、なんだ!?
前向きに考えて、なにをどうすればいいんだ!?
そう叫びたくなる。
悩み、あせり、気づまりで、桂は作務衣の短いズボンの裾からのぞく膝小僧に視線を落とす。
「……山で俺が言ったことだが」
ふいに、銀時がそう切りだした。
桂は顔をあげる。
だが、銀時は横を向いたままだった。
そして、続ける。
「ホントに、すぐに結論を出さねェで、じっくり考えてほしい」
ぶっきらぼうで、しかし真剣さが伝わってくる声だった。
幼い頃からずっと、二十年以上、想い続けてきたらしい。
一生という長さで考えれば二十年はたいしたことがないと銀時が言っているのも、たまたま聞いてしまった。
しかし、やはり二十年は長いと思う。
その二十年間、自分は気づきもしなかったのだ。
それを思うと、むげにはできない。
だから、結論を急がされないのは助かる。
けれども、高杉は、どうしても嫌なら考えるまでもないだろうと言っていた。
それはたしかにそのとおりだと思う。
銀時以外の男が告白してきたら、即座に断っただろう。いや、実際にそうしたことは何度かある。
あのとき即座に断らなかったのは、すぐに答えを出すなと銀時に言われたから、それに自分は混乱していたからだ。
だが、他の者と同じように考える余地もないほどなら、今すぐ断ればいい。
そう思うのに、ためらいがある。
どうすればいいのか、悩む。
それは考える余地があるということか。
銀時のことを好きだと思う。
ただし、その好意は、友人としてであって、恋愛感情ではない。
そう思う。
そう思うものの。
自分の中では、銀時は友人としてであっても、特別な存在だった。
なくしたくない相手である。
だから断りたくない、というのとは違う。
この好意が、高杉の言うような考える余地のあるものなのかもしれない。
わからない。
自分の中の気持ちが、わからない。
なにをどうすればいいのか、わからない。
ああああああああ!!
そう頭をかかえて叫びたくなる。
わからない。
わからずに、もやもやと悩んでいる。
じっくり考えてほしいと言われた。
だが。
こんな状態が続くのは、嫌だ。
白黒ハッキリつかないまま、もんもんと悩み続けるのは、嫌だ。
自分の性に合わない。
桂はソファから立ちあがった。