激ニブ星の恋人?
眼が合った。
真剣な眼差しが探るように見ている。
つい、顔をあげたまま眼をそらした。
それでも、顔が寄せられてくるのはわかった。
桂はまぶたを閉じた。
今度は、ちゃんと、唇にやわらかな感触が落ちてきた。
こんなふうにキスをしている相手は、幼い頃からのつき合いで、ずっと友人だと思っていた男である。
不思議な気がした。
しかし、不思議な気がしただけで、嫌悪感は少しもわいてこなかった。
軽く触れただけで、離れていった。
そのあと。
「……なァ、舌、入れていいか」
そう聞かれた。
熱くなっていた身体がいっそう熱くなったような気がした。
「聞くな、わざわざ、そんなこと……!」
わざわざ聞かずに、勝手にすればいい。
そう思った。
銀時はまたくちづけてきた。
そして、聞いてきたとおり、舌を入れてきた。
うわっ……!
許可を与えるような返事はしたものの、いざとなると、気が退けた。
しかし。
アイツ以上に、おまえのことを知っていて、おまえのことを想ってるヤツはいねーよ。
高杉に言われたことが、頭によみがえった。
あのとき、その高杉の言葉に納得した。
そのとおりだろうと、思った。
だから、銀時の気持ちに応えたくなった。
けれども。
深いくちづけのあと、様子をうかがうように黙りこんでいる銀時に、言う。
「……さすがに、これ以上は」
自分が想定していたのとは逆のことを銀時がしたいのなら、さすがに無理だと思った。
少なくとも、今は。
「しねーよ」
銀時は言う。
「てゆーか、これ以上は、俺の心臓が持たねェよ」
「……は?」
そんな繊細でも初心でもないはずだが。
「あのなァ、二十年以上片想いしてた相手と初めてキスしたら、どんな気持ちになるか、いくら激ニブのテメーでもわかるだろ」
「……それは、まァ、なんとなく」
あいまいな返事をした。
照れくさくて。
銀時が隣に座った。
その手を伸ばしてくる。
髪に触れた。
「何年でも、何十年でも、待つから、さ」
本気で待つつもりなのが、伝わってきた。
「……俺が入れるほうでは駄目か」
「そいつァ勘弁してくれ」
その夜、桂は万事屋に泊まったが、桂は銀時が寝室にしている部屋で寝て、銀時は応接間兼居間のソファで寝て、銀時は一切なにもしてこなかった。