激ニブ星の恋人?
第十七話 明日はどっちだ!?
万事屋に桂がやってきた。
近くまで来たので、立ち寄ったのだという。
「あっ、そろそろ定春の散歩に行かないといけないアル!」
「僕も一緒に行ってきます!」
それまでテレビを見ながらくつろいでいた神楽と新八が、ソファから勢いよく立ちあがった。
「では、俺も一緒に行こうか」
桂も立ちあがりかけた。
しかし。
「ヅラは来たばっかりアル。もっとここでゆっくりするアル」
「そうですよ、桂さん。ぜひぜひ、ゆっくりしていってください」
神楽と新八は熱心にすすめた。
桂は小首をかしげる。
「まァ、それでも俺はかまわんが」
浮かしていた腰をふたたびソファに落ち着けた。
「「では、ごゆっくり〜」」
そう声をそろえて言って、新八と神楽は応接間兼居間から出ていく。
なんだか、とってもわざとらしい。
銀時はそう思ったものの、指摘せずにいた。
応接間兼居間に、桂とふたりきりになる。
桂は向かいのソファに腰かけ、茶を飲んでいる。
さて。
どうするか。
「……ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
いつものように桂は生真面目な表情で訂正する。
しまったと銀時は心の中で叫んだ。
ついうっかりいつものやりとりをしてしまった。
こんなことをしたかったわけではないのに!
軌道修正しなければならない。
「桂」
「なんだ」
「あの、さ」
「なんだ、はっきり言え」
「俺たちは、その……、もう友達じゃねーよな?」
「なに!? まさか絶交宣言か!?」
桂が眼をむいた。
心底、驚いているらしい。
「そうじゃねーよ!!」
銀時は怒鳴った。
なぜ、いつもいつも、こんなふうに話が違う方向に行くのか。
ああ、桂が激ニブだからか。
そうか、そうか、はっきり言わなければいけないのか。
「俺たちは恋人同士になったんだよな!?」
やけくそで、口に出すのは恥ずかしいことを口に出す。
桂はまた小首をかしげた。
そして。
「ああ、そういえばそうだった」
あっさりと言った。
銀時の身体から力が抜けた。
なんだか疲れた。
しかし、桂は認めたのだ。
大きく前進したのだ。
このままなにもしないでいてはいけない。
「……じゃあ、さ」
「なんだ」
「その、ホラ、アレだ、恋人同士なんだからさ」
恥ずかしさのあまり発火しそうになりながら、言う。
「その……、それらしーことを、さ」
すると。
「ああ」
桂がなにか思いついた表情になった。
口に右手をやり、仕切り直すように、コホンと咳をする。
そして。
「苦しゅうない、近う寄れ」
そう告げた。
銀時は一瞬凍りついた。
だが、すぐに解凍する。
「なんじゃそりゃーーー!!」
叫んだ。
「俺ァ町娘か!? それで、テメーは悪代官かよ!?」
「なにを言う、俺は悪代官ではない! 正義の味方だ!!」
桂がむっとした表情で怒鳴り返してきた。
その直後。
「銀ちゃん、攻めじゃなくて受けだったアルか!?」
「この話は銀時×桂じゃなくて、桂×銀時だったんですか!?」
出かけたふりをして盗み聞きしていたらしい新八と神楽が応接間兼居間になだれ込んできた。
今日は進展しなさそーだ。
そう思い、銀時は気が遠くなった。