激ニブ星の恋人?
「ターゲット確認!」
神楽がトランシーバーに向かって言う。
その視線の先は道に向けられている。
桂が道を歩いている。
エリザベスをつれていなくて、ひとりだ。
ただの散歩なのか、のんびりした様子である。
「銀ちゃん、行くアル!」
そう神楽に命令され、銀時は道のほうに行った。
銀時は桂の正面に立った。
「よ、よォ」
偶然という設定なので、さりげないあいさつをするはずだったが、ぎこちなくなってしまった。
「ああ」
しかし、桂は不審に思わなかったようだ。
銀時はほっとする。
その直後。
「桂、覚悟ォォォ!」
また子の声が頭上から降ってきた。
銀時はその声のほうを見あげて、ぎょっとする。
道沿いに建つ二階家の屋根の上に、また子はいた。
いつものように銃をかまえている。
銀時がぎょっとした理由は、その銃口が自分たちのほうに向けられているからだけでなく、こんな真っ昼間にそんな目立ってしかたのないことをしているからだ。
真選組とか来たらどーすんだ。
なんだか心配してしまう。
と、そのとき。
また子がこちらに向けて撃ち始めた。
ふたたび銀時はぎょっとする。
ヤバい。
「逃げるぞ!」
銃弾が何発も飛んでくる中、銀時は桂の腕をつかんで走りだした。
走って、走って、その道の先に立っている者の姿を見て、銀時はぎょっとする。
今度は万斉だ。
粋に三味線をひいている。
と、思いきや。
その三味線の弦が何本も、桂めがけて飛んでくる。
とっさに銀時は桂を押しのける。
「銀時!」
銀時の手足に弦が巻きつく。
食いこんでくる。
痛い。
その弦をどうにか振り切って、また桂の腕をつかんで逃げる。
逃げた先に、今度は変平太がいた。
「私からは、これをお見舞いいたしますよ」
そういって、なにかを投げつけてきた。
紙だ。
そのうちの一枚を受け止めて、銀時は見る。
写真だ。
そこには幼少期の桂の姿が映っている。
「激ニブ星の恋人? ダイジェスト版」から持ってきたらしい。
桂もその写真を見ている。
「なんだ、これは!?」
驚いている。
そりゃそーだろーと銀時は思う。
桂は変平太をキッと見る。
「おまえは俺のストーカーか……!?」
なんだか妙な展開になってきた。
どうすれば軌道修正できるのかと銀時が頭を悩ます一方で、変平太は落ち着いた声で言う。
「私があなたに望んでいるのは、その写真の頃の姿にもどってもらうことで……」
「できるかァァァ!!!」
変平太の言葉は途切れた。
背後から、また子に蹴り倒されたからである。
さらに、また子は変平太に襲いかかる。
万斉もそれに加勢する。
変平太はまた子と万斉のふたりからボコボコにされる。
「……行くか」
銀時は桂に提案する。
「あ、ああ」
桂はなにがなんだかわからない様子で同意した。
その後もいろんなものが桂に襲いかかってきて、それを銀時が阻止した。
銀時が高杉から言われているのは、桂を徹底的に護ること。
なにから護るかとかいう具体的なことは一切教えられていない。
頭上からヤリが降ってきたり、川に突き落とされたり、燃えあがる炎の中を突っ切るしかない状態になったりと、さんざんなめに合わされた。
アイツらマジで俺たちを殺す気なんじゃねーか!?
そう銀時は思った。