激ニブ星の恋人?
ようやくゴールである万事屋にたどりついたときには、銀時はボロボロになっていた。
玄関に入り、戸をピシャンと締め、鍵を掛けると、心底ほっとした。
「銀時」
そんな銀時に桂が声をかけてきた。
「大丈夫か?」
すぐそばで、心配そうに見ている。
「ああ」
もういっそ倒れこんでしまいたいぐらいなのだが、銀時にはまだやることがあった。
また子が「これは絶ッ対にはずせないっス!」と主張した台詞を言わなければならないのだ。
「俺ァ、おめーのためなら、たとえ火の中、水の中……」
正直どこかで聞いたことのある台詞だと思う。
しかし、まさか本当に火の中や水の中に行かされるとは思ってもみなかったが。
それに。
「どんな危ねェ場所だって、飛びこんでやる」
本心だ。
ただ口にしたことがなかっただけで。
銀時は桂をつかまえて、抱き寄せる。
「どんな状況でも、俺が、おめーを護る」
そう告げた。
頭には、また子が「そーゆーことって、はっきり言ってほしいんっスよ、女は!!」と言っていた光景が浮かんでいた。
でも、コイツ女じゃねーしなァ。
そう銀時は思いながら、腕の力をゆるめて、少し身を退き、桂の表情を見る。
どーせ平然とした顔してるに決まってる。
期待してはいない。
が。
しかし。
予想に反して、桂はなんだかぼんやりとしている。
え。
え!?
まさか、また子ご推奨の台詞が効いているのか!?
嘘だろーと銀時は思った。
だが、しかし。
この状況を活かさなければならない……!
銀時は右腕をあげ、桂の頬にそっと触れた。
桂は黙っている。
その眼が伏せられる。
睫毛長ェなァと、あらためて思いながら、銀時は顔を寄せていく。
そして、唇を重ねた。
少しして、また桂の表情をうかがう。
さっきよりさらにぼんやりしているように見える。
その様子が、銀時の胸に来て、心臓が跳ねた。
「好きだ」
心のままに至近距離から告げる。
「おめーのことが好きだ」
以前なら何度言っても伝わらなかった言葉だ。
だが、今はそれがちゃんと伝わっているのを感じる。
そして。
あの雨の日に初めてしたのとは違う、恋人らしいキスをした。