激ニブ星の恋人?
第十九話 主導権は譲れない
「というわけで、新八君、君に協力を頼むことにした」
そう桂は言った。
ここは桂が潜伏先として借りている家だ。
机をはさんで向かい、新八の正面に、桂はきりっとした表情で座っている。
新八の眼は点になっていた。
桂から求められた協力。
それは。
銀時が桂に抱かれるよう説得しろというものだ。
……なに考えてるんだろ、このひと。
新八はあきれる。
しかし、桂は新八があきれているのにまったく気づいていない。
「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ、と言うからな」
桂は得意げな表情をしている。
「僕は馬ですか」
とりあえず、新八はツッコミを入れておいた。
そして。
「というか、桂さん、銀さんを抱きたいんですか?」
「いや、そういうわけではないのだが、いちおう恋人になったのだからな」
「桂さんが抱かれるほうというのは……」
「いやいや、それは不可だ。男として、それは譲れん」
「でも、銀さんも男ですけど」
「だが、俺のほうが男らしい!」
どこが?
新八の眼がふたたび点になった。
もしかして桂は自分の姿を鏡などで見たことがないのだろうか。
まあ、そんなことはないだろうが。
おそらく、強い思いこみがあって、それを見ているだけなのだろう。
さて、どうしたらいいのだろうか……。
「というか、桂さん、銀さん相手にその気になるんですか?」
そう聞いてみることにした。
自分だったら、ならない。
しかし。
「大丈夫だ」
力強く桂はうなずいた。
そして。
「これを用意したからな!」
机の上に、なにかを置いた。
栄養ドリンクっぽい小瓶だ。
その胴体部分に巻きつけられている紙には、
ビン瓶
と商品名が書いてある。
ビン瓶、ビンビン、か……。
なんというネーミングセンス……。
新八の気が遠くなった。
商品名の近くには「全国から悦びの声、殺到!」と書かれている。
「……銀さーん、貞操の危機らしいですよー」
うつろな表情で言いながら、新八は背後の畳へとパッタリと倒れた。