激ニブ星の恋人?
「カップル限定!コスプレ大会ィィィィ!!」
司会者がステージにあらわれ、そのマイク越しの大きな声が響き渡る。
場内の観客から歓声と拍手がわきあがった。
その様子を新八はステージの脇で見ていた。
ステージでは司会者が大会の説明をしている。
「なんと! 今まで公表していませんでしたが、審査員のひとりとして特別ゲストをお呼びしています。さあ、みなさん、拍手でお迎えしてくださいー!」
観客は拍手する。
満足したように司会者は笑い、ふたたび口を開く。
「特別ゲストは、お通ちゃんです!」
そう告げたとおり、新八がいるのとは逆方向から、寺門通がステージへと進み出る。
お通ちゃんは、白いブラウスに、胸元には赤いリボン、そしてプリーツの入ったグレイのスカート、という制服のような格好をしている。
短いスカートの裾がひらりと揺れた。
「こんにちは〜、寺門通です〜!」
お通ちゃんはアイドルらしい明るい笑顔を客席に向けた。
「聞いてねーよ!」
新八がステージ脇で愕然とした表情で、両手を拳にして震わせながら、怒鳴った。
そのうしろで。
「スケジュールを全部オメーに言う必要ねェだろ」
銀時がやる気なさそうに言った。
さらに、その隣で。
「ぱっつんは、お通ちゃんの大勢いるファンの中のひとりアル。恋人でも友達でもないアル」
神楽が厳しいことを冷静に告げた。
新八はふたりをふり返り、キッとにらんだ。
「ええ、たしかにそのとおりです! でも、寺門通親衛隊隊長としては、お通ちゃんの仕事のスケジュールはすべて把握していないとダメなんです!」
「なんかストーカーみたいアルな」
「みたいじゃなくて、そのものだろ」
速攻で、神楽と銀時からツッコミが入った。
だが、新八はふいにハッとした表情になり、ステージのほうを向く。
「お通ちゃんの歌が始まる……! 親衛隊隊長として、応援しなければ!」
使命感に燃えた表情で、客席へ行こうとする。
「ぱっつん! 銀ちゃんの恋の応援はどうするアルか!」
「いざとなったら、他人の恋路より、自分の恋路ー!」
新八はふり返ることなく答え、客席のほうに駆けていった。
「恋路って言っても、完全一方通行アル」
神楽がおもしろくなさそうに、つぶやく。
客席では、いつのまにか寺門通親衛隊の法被を着た新八が、曲に合わせて踊っている。
「まァ、それでも、アイツがそれで良ければ、それでいーんじゃね?」
銀時は首筋をボリボリとかいた。