激ニブ星の恋人?
「なんだ、それ」
銀時はテーブルに近づき、箱のほうに手を伸ばした。
だが。
「さわるな!」
びしっと、鋭い声が飛んできた。
九兵衛だ。
銀時はそちらのほうを向く。
「ああ? これはうちに届いたもんだろ。この家の主がさわって、なにが悪ィんだ」
「たしかにここに届けた物だが、依頼主がここにくるまで僕以外の者にさわらせないようにと言われている」
堅い表情で言った九兵衛の隣で東条がうなずく。
「そうです。もしも依頼主が来るまでに箱を開けてしまって、それが依頼主にバレたら、血の雨が降るでしょう」
東条の顔には暗い陰が落ちている。
本気でおそれているようだ。
柳生四天王の筆頭の剣の遣い手であるにもかかわらず。
「オイオイ、なんか物騒だな。その依頼主って、よっぽど強くて怖いヤツなのか?」
銀時は眉をひそめて、聞いた。
そのとき。
ガラガラッと玄関の戸が開けられる音が聞こえてきた。
また、だれか来たのか。
銀時は眼をテーブルから応接間兼居間の戸口のほうにやる。
そのあいだも、だれかがこちらに向かってやってくる足音が聞こえていた。
しばらくして。
「お待たせしました」
明るく言いながら、お妙が部屋に入ってきた。
その眼はテーブルの上を見て、次に九兵衛を見た。
「九ちゃん、届けてくれて、ありがとう!」
輝くような笑顔を向けられて、九兵衛は頬をほのかに朱く染めている。
依頼主は、お妙だったようだ。
「……たしかに、強くて怖いヤツだったな」
ぼぞっと銀時はつぶやいた。
小声だった。
しかし。
「なにか言いましたか、銀さん」
穏やかな、お妙の声。
その顔には微笑みが浮かんでいる。
だが、その手には薙刀が握られ、その刃は銀時の首をとらえている。
「ちょ、ちょっと待て……! つーか、これ、一体ェどこから出したんだ……!?」
「武家の娘はいつも懐剣を持ち歩いているものなんですよ」
「懐剣なんてゆー可愛いもんじゃねーだろ、これ!! つーか、なんで、これに俺の首が襲われなきゃならねーんだよ!」
冷や汗をだらだら流しながら、銀時は抗議した。