激ニブ星の恋人?
そこに。
「お妙さーん」
聞き覚えのある声が割りこんできた。
「これ、ここでいいですかー?」
近藤である。
えっ。
銀時は顔を引きつらせたまま凍りつく。
その首から薙刀が去った。
「ええ、そこでいいです」
にっこり笑って、お妙が近藤に言った。
近藤は嬉しそうな顔をして応接間兼居間に立っている。
その近くには酒樽が置いてあった。どうやら、それをどこからかここまで運んできたらしい。もちろん、お妙に頼まれたのだろう。
お妙は近藤のそばまで行く。
「ありがとうございました」
礼を言い、さらに、しなやかな指で近藤の胸を軽く押した。
「じゃあ、これで」
さらりと別れを告げた。
しかし、近藤は動かない。
「これから宴会ですか? だったら、俺も混ぜてもらいたいなー、なんて」
ハハハと陽気に笑う。
だが、お妙は笑顔のまま手を振った。
さようなら。
声には出さずに、そう告げている。
早く帰れ。
笑顔なのに、そんな思いが強く伝わってくる。
近藤は笑うのをやめた。
お妙の無言の圧力に負けたらしい。
肩を落として、去っていく。
その姿が見えなくなり、やがて、玄関のほうから戸が開け閉めされる音が聞こえてきた。
近藤は万事屋から出たようだ。
やっと、銀時の顔の引きつりが無くなる。
「……つーか、あのゴリラ、自分の捕まえる対象の顔、覚えてねーのか?」
低い声で言った。
それから、まわりを見渡す。
桂、そして、鬼兵隊の主要メンバーがいる。
彼らは攘夷志士であり、指名手配犯だ。
「この顔にピンときたら真選組まで、じゃなかったのかよ」
もうここにはいない真選組局長に対して、ツッコミを入れた。