激ニブ星の恋人?
男たちは用心棒で、彼らの雇い主は悪徳商人だった。
その商人の非合法の取引をたまたま目撃してしまった女がいた。
女はすぐに逃げて、そのときは捕まらずにすんだ。
しかし、そのままにはしておけないので、商人は用心棒たちに女を捜すように命じた。
用心棒たちは女を見つけた。
女は妊娠中に夫を事故で亡くし、身よりもいないので、ひとりで娘を育てていた。
危険なことに巻きこまれるのをおそれたらしく、警察には届け出ず、娘をつれて江戸を離れようとしていた矢先のことだった。
女がつかまったのは、橋の上だった。
その橋の下の河原に、桂がいた。
騒がしいと、桂が橋を見あげたとき、女と眼が合った。
そして、女は赤ん坊を桂のほうに投げた。
どうか、その子をつれて逃げてください。
そう必死の形相で訴えて。
直後、女はその近くに止まっていた車に押しこまれた。
桂は赤ん坊を抱えながら駆けつけようとしたが、女を乗せた車はすぐに走り去った。
さらに、車には乗らなかった用心棒たちが桂にほうに走ってきた。
用心棒の数は十人以上。
だが、ひとりでも彼らに勝つ自信はあった。
しかし、赤ん坊を抱えてここで戦うのは不利。
そう判断して、桂は逃げた。
桂が赤ん坊をあやしている。
のどかな光景のように見えて、銀時の目尻が下がりそうになった。
家につれて帰りたい……!
そう思う。
欲望まみれの視線を受けて、桂が顔をあげ、銀時のほうを見た。
「銀時、頼みがあるんだが」
「断る」
桂の言葉をさえぎるように、銀時は言った。
ついさっきまでとは気分がきっぱり変わっている。
「そいつを預かってくれってゆーことだったら、な」
用心棒たちから、この赤ん坊の母親がどこにつれていかれたのかを、聞いた。
そこに桂は乗りこもうとしているのだ。
赤ん坊の母親を助け出すために。
だから、赤ん坊を銀時に預けようとしたのだろう。
赤ん坊を銀時に預けて、たったひとりで敵地に行くつもりで。
「……銀時」
「じゃあ、行くか」
軽い調子で言う。
「母をさがして何千里と、そのついでに、悪党退治に」
桂が笑った。
亭主関白じゃなくていーわ。
胸の中で、つぶやいた。
うしろについてきてくれなくていい。
肩を並べて、ともに走りたい。
そう思ったとき。
桂が口を開いた。
「それでこそ、俺の生涯の友だ!」
胸を張り、満足げに、告げた。
「……銀時、どうした。なぜ、突然、うずくまったんだ?」
「……生涯の友とか言うんじゃねー」
「なに!? 俺の生涯の友では不満なのか!? 生涯の友のどこが不満なんだ!?」
「あー、もう、繰り返すんじゃねーよ!」
顔をしかめ、銀時は立ちあがった。
「おい、銀時」
「ごちゃごちゃ言ってる場合じゃねーだろ。早く行かなきゃならねーだろ」
「そうだな」
桂はうなずく。
そして、肩を並べて走り出した。