激ニブ星の恋人?
銀時が応接間兼居間にもどってきた。
湯飲みを持って歩き、テーブルをはさんで向かい側のソファにではなく、桂の隣に腰をおろした。
それから、茶を飲む。
「……はぁ〜、落ち着く」
中身が半分以下になった湯飲みをテーブルに置くと、銀時はソファに深々と背中を預けた。
その様子を桂は無言で眺める。
ふと。
銀時が身体を起こした。
顔を桂のほうに向ける。
「なァ、なんかあったか」
問いかけてきた。
少し真剣味を帯びた表情をしている。
「浮かねー顔、してるけど」
探るような、深く入ってくるような眼差し。
妙に、落ち着かない気分になる。
「別に、なにも、ない」
そう答えたが、不自然な態度になってしまったように思う。
「ふーん」
やはり銀時は納得していない様子だ。
「そーいやさァ、さっきまでいた新八と神楽と、なんの話をしてたんだ?」
いきなり話が変わった。
しかし、桂にとっては嬉しくない方向である。
だが、答えないのは変だ。
「……俺の過去の恋愛について聞かれた」
「へえ」
予想外だったのだろう、銀時は眼を丸くした。
「で、なんて答えたんだ?」
さらに聞いてくる。
うっ、と桂は一瞬ひるんだものの、口を開いた。
「俺の初恋の相手は年上で、お妙殿のように美人で強かったと答えた」
一気に、ヤケクソのように言った。
次の瞬間。
銀時が噴きだした。
声をあげて、大笑いしている。
「あーあーあー、たしかに、オメーは気の強ェ女が好きだよな!」
おかしくておかしくてたまらないといった顔をして、言う。
「戦んとき、オメーが別れ話した相手の女が、単身、俺たちの軍に乗りこんできたこともあったよなァ」
桂はギクッとする。あまり触れられたくない過去だ。
しかし、銀時はおかまいなしに続ける。
「それでさァ、オメーを見つけて近づいてきて、それから、オメーを思いっきり殴り飛ばしたんだったよなァ」
あのとき、銀時は桂の近くにいた。
だから、だれかから聞いた噂ではなく、実際に見た話なのだ。
「ありゃー、いいパンチだったぜ」
そう告げると、銀時は顔を伏せた。
身体が小刻みに揺れている。
笑いが止まらない状態なのだ。