激ニブ星の恋人?
銀時は顔をそむけた。
その表情が見えなくなる。
「……それについちゃあ、言い訳のしよーがねー」
少し重い声で返事をする。
「ただ、ちょっとだけ言わせてもらうと、本気で好きになれるかと期待してたし、そうなるつもりだったからこそだったんだが、結局、俺の心の中には、たったひとりがいて、悪あがきにしかならなかったんだよ」
心の中にいたたったひとりというのは、まちがいなく自分のことだろう。
銀時にしても、ちっとも伝わらなくて友人だと思っている桂をあきらめたかったのだろう。
だからといって他の者とつき合うのはどうだろうと思う。
その他の者に対して、悪い。
だから、言い訳のしようがない、と言ったのだろう。
けれども、同情の余地がないわけではない。
性的欲求というだけでなく、人肌が恋しくなることもある。
友人ではないだれかにそばにいてほしくなることもある。
銀時はモテないようなことを言うが、実際は、モテる。
ふだんは、ある程度まで寄って来られたら、それ以上は来ないように予防線を張る。
だが、銀時がその気になれば、相手には困らないだろう。
そう桂は思い、ふと、気になった。
「なァ、銀時」
聞いてみることにする。
「今はどうなんだ? 今はそういう相手はいないのだろうな?」
今は、自分と銀時は、いちおう、恋人同士である。
ただし、いちおう、が付く。
今と昔とどれだけ違うのだろうか。
こういう状態で、銀時に不満はないのだろうか。
だから、もしかしたら、自分の知らないところで、別のだれかと深い関係になっているかもしれない。
もしそうであっても、自分は気づかない。
激ニブであるらしいから。
銀時がこちらを向いた。
真剣そのものの表情。
眼差しは、強く、鋭い。
心を射抜かれる。
「ふざけんじゃねェよ」
そう吐き捨てた。
声には怒気がにじんでいた。