激ニブ星の恋人?
銀時の手が羽織の襟に触れた。
だから、羽織を脱いだ。
その羽織を銀時はつかみ取ると、床に落とした。
まあいいか、と思う。
次に、銀時は帯に触れてきた。
だから、帯に手をやる。
帯を解こうとした。
そのとき。
カンカンカン、という音を耳がひろった。
「……マジかよ」
ボソッと銀時がつぶやく。
「無視してェ」
階段をのぼってくる音だ。
「無理だろう。音はどんどん大きくなってきているぞ」
音が大きくなるということは、それだけここに近づいてきているということだ。
やがて、ガラガラッと玄関の戸が開けられる音がした。
「ただいまアルー!」
「ただいま帰りましたァ」
神楽と新八の弾けるような明るい声が聞こえてきた。
「アイツら、帰ってくんの早すぎだろ……!」
小声で文句を言いながら、銀時は床に落ちた羽織をひろって差しだしてくる。
それを受け取って、着る。
銀時の眼がじっと見ている。
「……まァ、抜き差しならねェところまできたときに帰ってこられるよりマシか」
肩を落として、言う。
「だが、それにしたってよォ」
未練たっぷりな様子である。
そのあいだも、新八と神楽がこの部屋へと近づいてくる物音がしている。
銀時はソファから腰をあげた。
そして、テーブルをはさんで向こうにあるソファのほうへ行く。
「……あ〜あ」
残念そうな声をあげつつ、銀時はソファにドスンと腰をおろした。
その直後、新八と神楽が部屋に入ってきた。
「銀ちゃん、ヅラぁ!」
夜兎族の少女は元気いっぱいだ。
しかし、銀時が落ちこんでいるのに気づいたらしく、顔色が変わる。
「……アレ、もしかして、お邪魔だったアルか?」
「あー…、僕たち、早く帰ってきすぎましたか?」
そんなことを聞かれて、まさか、そのとおりだとは言えない。
銀時はふたりをにらんだ。
「オイ、この串の数は一体ェどーゆーこった!? 団子がちゃんと付いてたのは一本だけだったぞ!!」
机の上の皿をビシッと指さして、糾弾する。
新八と神楽はぎょっとしたような表情になった。
「えーっと、その、それはですね、主に神楽ちゃんが……」
「あー! 新八、私のせいにするつもりアルか! 男らしくないアル! だからモテないアル!!」
「なんだゴチャゴチャうるせェなァ、なんだかんだ言っても、テメーら、この糖分大好きな銀さんのためにたくさん残してやろうって気がなかったってことだろ」
万事屋三人は言い争っている。
けれども、すさんだ感じはしない。
むしろ仲の良さを感じる。
おかしくて、桂は笑った。