激ニブ星の恋人?
名前を呼ばれたが、それを無視する。
「じゃあな」
銀時は逃げるように居間をあとにした。
日付がクリスマスイブからクリスマスに変わったあとの、夜遅い時刻である。
外は雪まじりの冷たい風が吹いている。
ホワイトクリスマスだ。
あんまり嬉しくねーけど。
寒いから。
そう思いながら、銀時は鼻をずずっとすすりあげた。
「早く家の中に入れ」
土間に立っている桂にせかされた。
だから、銀時は家の中に足を踏み入れる。
そのまま土間を進み、上がりかまちの近くでブーツを脱ぐ。
桂が玄関の戸を閉め鍵をかけているらしい音が聞こえてきた。
そのあと、ふたりで居間のほうへ移動する。
「万事屋でちゃんとサンタしてきたのか?」
桂が問いかけてきた。
きものを着ているがいつものきものではない。
寝間着らしい。
風呂に入ったあとなのだろう。
その身体から、かすかに良い香りが漂ってくる。
「そうするつもりだったんだけどよォ」
銀時はまた鼻をずずっとすすりあげた。
「なんか、いろいろあって、散々だった」
万事屋にサンタを名乗る者が銀時以外にも複数あらわれて、サンタの座をめぐる戦いになったのだ。
戦って負傷までしてしまった。
「まァ、おまえにはよくあることだな」
「で、オメーはどうなんだ? あんなカッコして店に出て、客に変なことされなかっただろーな?」
あんなカッコとはミニスカサンタの格好のことである。
「ああ、ステージで少し踊らされて、それで終わりで、そのあともう帰っていいと言われたからな」
席で客の相手をさせられることはなかったようだ。
「そーか、そいつァ良かった」
しかし、あの格好を他の男に見られたと思うと、まったく嬉しくない。
不愉快だ。
心が狭いですからねェ、俺ァ。
そう胸の内で開き直る。
やがて、居間に到着した。