激ニブ星の恋人?
「ちょうど寝ようとしてたところに、おまえが来たんだ」
居間には灯りがついていたが、暖房は切られていた。
だが、暖房が切られてから間もないらしく、居間は暖かい。
ひどく寒い中を歩いてきた銀時の身体の硬さがゆるんでいく。
桂は暖房をつけた。
「あ、そうだ、店を出るまえにチキンとケーキをもらったんだが、ひとりでは食べきれん量だったので残してある。おまえ、食べるか?」
「ああ。腹が減ってるから、ありがてェ」
「じゃあ、持ってくる。ついでに茶をいれてこよう」
「ちょっと待て」
居間から出ていこうとする桂を銀時は呼び止める。
「台所に行くのか?」
「ああ、そうだ」
「それなら、俺も行く」
「別に手伝ってくれなくていいぞ。おまえはここで暖まっていたらいい」
「そーじゃなくて、俺も台所に用があるんだよ」
少し荒っぽく言ったあと、銀時は持ってきた紙袋からあるものを取り出す。
ソバだ。
「これを作るからな」
「おまえ、チキンとケーキの他にソバも食べる気なのか」
「ちげーよ。食うのは、オメーだ。ソバ、好きなんだろ?」
「ああ。だが、どうして」
「あのなー、なんでわからねェんだ」
もどかしい。
けれど、桂は激ニブなのだ。
ハッキリ言わなければならない。
「クリスマスプレゼントに決まってんだろ」
なんだか無性に照れくさくなって、銀時はそっぽを向いた。
もっと洒落た物を持ってきたかったのだが、桂が喜びそうな物が他に思いつかなかったのだ。
「あっ」
桂が声をあげる。
「ああ、そういうことか」
「……腹が減ってねェのなら、ムリに食えとは言わねェけどな」
「いや」
否定する桂の声はやわらかい。
「減ってるから、ちょうどいい」
そう銀時に告げた。
居間の机にあったチキンとケーキはあっというまに無くなった。
現在、銀時の胃袋の中だ。
本当に腹が減っていたのである。