続 さらば宇宙戦艦ヤマト 11
<未来へ>
「随分帰りが遅かったな。」
相原が廊下ですれ違った時に島に声を掛けた
「ん?あぁ…」(島)
「エアカーで出て行ったろ?隣に乗ってたのサーシアちゃん?」
島は見られていたのに気付かなかった。
「あぁ、帰還の挨拶で英雄の丘に行ったらサーシアがいてさ…晩飯一緒に
食べて送って来た。」
余り嬉しそうじゃない島に
「姫と一緒だったのに随分沈んでるじゃないか?」
相原がちょっといじわるっぽく言うと
「親子、って言われちゃったよ。確かにそうだよな、見た目は高校生だけど
実年齢は2歳半か3歳だろ?…俺ら21だもんなぁ…」
島は全く相原のいたずらっぽい言い方を気にする事もなく肩を落としてそうつぶやいた。
(重症だな)
相原は女性に対して想いつめる島を初めてみた気がした。ユキの時はどちらかと言えば押していく方ですでに古代に気があると気付いた時は後方支援に回っていたからだ。
「いいじゃないか、見た目年齢と精神年齢が比例してるんだから。比例し
てなきゃヤバイだろうけどさ。ユキさんのお母さん、お元気でしたか?」
相原は心の中で笑いながらも話を続けた
「あぁ、元気そうだったよ。サーシアが寮に入った時が心配だけどな。」(島)
「そうか半年したらサーシアは入寮か…まぁ近いところだから週末ごとに
帰れるから寂しくないと思うけどな。…あ…」
相原が何か気付いたようで言葉を詰まらせると
「何だ?」(島)
「俺らと違って男女共学ですよね?」(相原)
「俺ら、ったってたまたま男ばかりだっただけだろ?」(島)
「えぇ、そうですが…予備生になった女性は少なかったらしいですね。
長官から聞いたんですがユキさんは当時お父さんの仕事の関係で九州に
住んでいたそうで…本当は九州の訓練学校に通う予定だったそうです。
でも医師希望だったので中央病院属の寮に入ったそうです。だけど看護師
に変更したのでその後は看護師寮へ移ったそうですよ。」(相原)
「九州から一人で…か。相原は東北からだろ?近い訓練学校はなかったのか?」
島が“今更、って感じだよな”と言ったが
「ウチの方は予備生を受け入れる訓練学校がなくてさ…
トウキョウ、チバ辺りは受け入れ態勢が出来ていたからそっちで、って
なっちゃったの。リニアで移動する時チバは一度トウキョウステーション
経由しないとダメでしょ?」(相原)
「それでトウキョウ方面を希望したんだ」(島)
「それもあるけど最初は“優先で治安のいいトウキョウシティの地下都市の
部屋を用意する”って言われてさ…結局地元を離れたくないって言って
トウキョウシティに引っ越さなかったけど…」
相原が当時を思い出して少し寂しそうに言った
「あの時はまだお父さんが生きてたんだ…」
「相原…」
島は寂しそうな相原を元気付ける言葉が浮かばなかったが
「でもね僕さ予備生になって家族だけが全てじゃないって分かったんだ。
自分の居場所を見つけられた気がしたんだよ。それは訓練予備生から
みんなと一緒だったからだと思う。一人で宇宙遊泳して地球に帰ろう
なんてバカな事しちゃったけど…あの事があったから強くなれた気が
するんだ。」
相原はそう言ってニカっと笑った。島はその相原の眼に強い力を感じた
「相原、変ったな…もちろんいい方向に、だよ。強くなったな、ってさ。」
島はどちらかと言うと頼りなげだった相原がどっしりとしたイメージになったような気がした。
「仕事のせいか?それとも俺がいない間にプライベートで何かあったか?」
島の意外な問いに相原は
「べ、別に何もないですよ。それより島、自分の事ちゃんとしてくださいね!」
そう言うとさっさと相原は自室に戻って行った
「なんだよ、あいつ…」
島はそう言いながら自室に戻った
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 11 作家名:kei