続 さらば宇宙戦艦ヤマト 11
島が自室に入ると携帯が鳴った。相手を確認して出ると
〈大介さん、お疲れ様。今日戻って来たんでしょう?〉
にこやかな女性が画面に現れた
「あぁ、ただいま。今日、戻ったよ。」
島は携帯片手にベッドを出してどっかり座った。
〈明日、会えるかしら?本当は今日会いたかったけどきっと英雄の丘に行く
と思って遠慮したのよ?〉
女性は笑いながらも少し拗ねた表情をした
〈本当は一緒に行きたかったけど…まだ一緒に連れて行ってくれないの?〉
島は英雄の丘に行く時は一人で行っていた。誰かと行くとしてもそれはヤマトのクルーと自分の家族だけだった。
「いや、それよりどうした?」
島はその事に触れたくなくて話題を変えた
〈明日、お休みでしょう?どこか連れて行ってもらおうと思って…私も
休暇もらったの。〉
女性は嬉しそうに画面の島に向かって話す
「そうだな、じゃぁ明日10時に迎えに行くからいつもの公園で待ってて」
島がそう言うと
〈自宅へ迎えに来てくれないのね。〉
女性が呟いたが
「悪い、いつもの公園で。」
島はそう言うと一方的に携帯を切りベッドの脇に放り投げると小さなため息をついた
島とその女性の出会いは狭いカウンターバーだった。
ヤマトがイスカンダルから戻ってきてクルーがアイドルのような扱いを受けてる時に一人でふらっと入ったバーで8席のカウンターにバーテンダーが一人…そこの店の奥に座っていたのがその女性だった。
バーテンダーも“島”だと分かっていただろうに一般客と同じように扱ってくれた。
何度か通ううちにその女性がバーテンダーを通して話すようになりいつしか店で会うと隣同士で飲む間柄になりいつしかお互いの連絡先を交換し合う仲になってたが男と女の仲になるまで二人とも名前を明かさなかった。
女性の名前は“金井百合子”
島と百合子はバーで飲んだまま近くのホテルで一夜を共にした時百合子が島の腕の中で
「あなたの名前は?」
と聞いてきた。島は先に答えず
「きみの方こそ…人に名前を聞く時はまず自分から、でしょう?」
と言うと
「私は金井百合子」
「俺は…島大介」
島がおそるおそる自分の名前を言うと
「あら?聞いた事のある名前ね?有名人と同姓同名かしら?」
そう言って笑う百合子に島はほっとしたのだった
「随分長い航海だったのね。夏、どこにも行かず終わってしまったわ。
ねぇどこへ行っていたの?」
百合子は助手席に座って島の指に自分の指を絡めた
「あぁ、イスカンダルに行ってそれからすぐタイタンへ…」(島)
「相変わらず忙しいのね…忙しくて私が待ってる事忘れちゃってるんじゃ
なぁい?」
百合子は久々に会えて嬉しそうに笑うが島は心ここにあらずと言う感じだった
「でもね、私も忙しかったのよ?惑星からたくさん資材が送られて来る
でしょう?だいぶ民間の仕事も増えて巷も潤い始めてるわ。」
「そうか」
「ねぇ今日はどこへ連れて行ってくれるの?」
島はトウキョウシティを離れて赤茶色の大地の真ん中を走る高速を走っていた
「どこへ行こうか…」(島)
「決めてないなら私熱海へ行きたいわ。温泉が復活したんですって!」
百合子が島と絡めていない左手で携帯を操作する
「ねぇ、ここでいい?ナビに場所転送するわ。」
島が受信できるように百合子が絡めていた指をすっと抜いてナビを操作した
「…っと転送完了…島パイロットお願いします。」
にっこり笑う百合子はとてもきれいだった
「結構時間かかったわね」
熱海に到着したのは午後1時過ぎだった。
「いい部屋でしょう?少し前にHP見て気に入っちゃって…大介さんが
帰ってきたら連れて行ってもらおうって、決めてたの。」
そこは海から少し距離はあるがホテルの最上階だったので海を見る事も出来た。
「箱根でもよかったんだけど海見える所ってちょっと得した気分になるから
熱海にしたの…ねぇどこか体調悪いの?」
百合子はいつもと違う島に聞いた
「いや…別に…いいところだな…」
(サーシアにみせてやりたいな)
島はそう返事したものの目の前にいる百合子でなく頭の中がサーシアでいっぱいになってる事に気付いた
「そう…ならいいんだけど…いつもとちょっと違うわ…ここね部屋にも
温泉引いてるの。だから…一緒に…どう?」
百合子はそう言うと海の見える窓を離れて浴室を見に行った
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 11 作家名:kei