続 さらば宇宙戦艦ヤマト 12
その夜、サーシアは久々にユキの夢を見た。
<サーシアちゃん、いよいよね。>(ユキ)
(ユキさん…)(サーシア)
<大丈夫よ、サーシアちゃんなら…きっと繰り上げ卒業して早くイスカンダル
へ行けるはずよ。その頃はきっとミオちゃんが訓練生ね。>
ユキは少し寂しそうに笑った
(ユキさん、どうしたの?)(サーシア)
<ん?なんでもないわ…やっぱりサーシアちゃんと直接お話ししたかった
って思っちゃったの。一緒にお勉強して、お買い物に行って恋の話して…
たくさん、たくさん話すことあっただろうな、って思うと急に寂しくなっ
たの…。>(ユキ)
(ユキさん、大丈夫?)(サーシア)
<大丈夫よ。よかった…地球に来てよかったって言ってもらえてほっと
してるの。島くんはとってもいい人よ。すべてを任せて大丈夫な人…
この一年でよくわかっていると思うけど…。>
ユキはいつもの笑顔だった
<いつもそばにいるからね。>
サーシアはふと目が覚めた。
「ユキさん…また会えるわよね?」
少し不安になったサーシアが小さな声でつぶやくと頭の中で声がした
<大丈夫よ、テレサさんと一緒に見守ってるわ>
…と。自分にはユキだけじゃなくてテレサも付いている…そう思うだけで不思議と安心できた。
翌日、入学式が行われた。特待生は普通の新入生達より一週間早く入学式があり軍内部、ということで父兄は参加することができない。
サーシアを含めて60名程の入学式。壇上には“おじいちゃん”の藤堂がいた。壇上にいないが来賓席に相原と太田の姿も見える。相原と太田はサーシアと目が合いそっと手を振った。
クラスは12クラスに分かれ5人に一人担任を置く体制、との事だった。先の大戦で地球防衛軍が壊滅状態にあるので将来のブレーンを育てるために長期休暇はない、と説明があった。それは古代や島が育てられた環境によく似ていた。生徒数が多いのでマンツーマンの指導はできないが毎週末テストを繰り返しその内容如何で進む度合いが変わってくる。
サーシアは周りを見渡した。自信に満ち溢れた顔、自信なさそうに下を向いているもの…それぞれだった。
入学式を終えるとすぐに授業だった。一日も無駄にしない、そんな姿勢が見えた。
「長官、サーシアと話もせず戻ってよろしいのですか?」
相原が入学式を終えて横須賀基地を後にする藤堂に聞いた。
「話したい気持ちはやまやまだが…彼女はもう訓練生だ。私が話してしまっ
たら周りからどう言われるか…電話はメールでいつでも話はできる…
少し寂しいが仕方ないだろう。今日の元気な姿を妻に見せてやりたかった。
孫も仕事が忙しいようでほとんど遊びに来なくなってしまったからな。
あ、そう言えば晶子から聞いてるが時々連絡を取り合ってるそうじゃないか
どうかね?うちの孫娘は?」
藤堂が急に孫娘の事を振ってきたので相原はあわててしまった
「長官…どう、と聞かれましても…いや、あの…同じ秘書課として時々挨拶
されたりわからないことを聞かれたり…でして…あの…」
「ははは、慌てなくていい…若いっていいな。どうだ?島とサーシアも、と
晶子から聞いている。私としてもヤマトクルーなら二人を安心して任せる
事が出来る…晶子はいい子だがすこしおっとりしすぎているところがある。
仕事上でもそれがマイナスに出ないよう指導してくれな。」
藤堂は穏やかに笑っていた。相原はこんな穏やかに笑う藤堂を初めて見た。それだけ地球が…地球防衛軍が落ち着いてきた証拠なのかもしれない、と思った。
(古代、見ているか?姪っ子さんはお前に似て頭がいいぞ。ユキさんによく
似ていると思わないか?きっとこのまま島とうまくいく、という事はお前
と名実共に親戚になる、って事だよな?今更だが…やっぱり生きていて
ほしかったよ…)
相原はこみあげてくる涙をぐっと堪えた
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 12 作家名:kei