続 さらば宇宙戦艦ヤマト 12
「久しぶりだね…元気だった?」
島は翌日出航でYUKIに乗り込みイスカンダルへ向かう予定だった。そこで夕方サーシアを訪ねて夕食を一緒に食べようと寮から連れ出しエアカーの中で話をしていた。
「ミオが地球に来るのね…楽しみだわ。」
サーシアは置いて行かれる寂しさとミオが来る、という楽しみと複雑な気持ちだった。
「寂しかったら寂しい、って言っていいんだよ?」
島がそっとサーシアの頭を撫でてそういうとサーシアは我慢していた涙が一気に溢れてきた
「ほら、ガマンするのは古代家の悪い伝統だって言ってるだろ?泣きたい時は
泣いたほうがいいんだ。…一緒に連れていけないから我がまま言われても
困っちゃうけどな…」
島はそういってサーシアの手をそっと握った。
「お父様とお母様に会いたい…あってお話がしたい…」
「そっか…」
サーシアは自分の涙を拭きながら
「島さんと一緒に行きたい…」
小さな声だった。でもちゃんと島に聞こえた
「俺もサーシアと一緒に行きたかったよ。だけど今我慢すれば将来一緒に
行ける日が確実にやってくる…そう思って頑張ろう…。」
島がそういうとサーシアは頷いた。
二人は英雄の丘にやってきた。大きな沖田の像を見上げてから
「明日、イスカンダルへ向かいます。航海を見守ってください。」
と言うと二人は黙とうをささげた。
サーシアはテレサのところへ行っていつもと同じように両手を包みそっと額を当てた
(よく、いらしてくれました。とてもお忙しいみたいね。でも新しいお友達
もできて…目標がある人と一緒にいることはとても素晴らしいことだわ。
お勉強が大変みたいだけどあなたなら大丈夫よ。頑張って…今回ご両親に
お会いできないのは残念だと思うけど今は勉強に集中することが大切よ。)
サーシアは黙ってうなずいた。
(ユキさんも付いてるし…あなたは大丈夫…)
そこへユキが現れた
<サーシアちゃん…YUKIが行ってしまっても私はここにいてずっとあなたを
見守ってるから安心して古代くんはヤマトでイスカンダルに行く、って
言ってるけど私はここに残るから…一緒に待っていましょうね。>
サーシアは驚いた
<やぁだ、そんなに驚かなくても…大丈夫よ、古代くんだってあなたのお父様
のお顔を見たいのよ…ブラコン、だからね。>
そういってユキは明るくコロコロと笑う。テレサも一緒に笑っていた。
<サーシアは島くんが行っちゃう寂しさのほうが大きいでしょう?それは
ちゃんと島くんに伝えないとダメよ?島くん自分の事となるとちょっと
鈍感になっちゃうから…>
(そうね、なぜかしら?)
テレサも不思議そうにつぶやく
<誰だって自分に自信が持てないのよ。だから笑顔で見送ってあげてね。
そしたら島くんも安心して出かけられるわ。そして戻ってきたら最高の
笑顔で迎えてあげて…。戻ってくる場所がある、ってとても大切な事なの。
島くんをお願いね。>
ユキとテレサは笑顔でサーシアの意識から消えて行った。サーシアは静かにテレサの手を放す。
「何か言ってた?」
島がテレサから離れるのをみて聞くと
「えぇ…内緒話をたくさんしたわ。」
「そうか…俺の悪口か?気になるな…まぁ…いいか。さて、何を食べようか?」
島がテレサの手を握って冷えたサーシアの手を握りながら聞くと
「島さんと一緒なら何でもいいわ。」
とサーシアが答えた。島は進とユキのレリーフに挨拶してから英雄の丘を後にした
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト 12 作家名:kei