続 さらば宇宙戦艦ヤマト ミオ編 1
「イスカンダルにいても…何も始まらない…」(南部)
「南部さん…」(ミオ)
「最終的に決めるのはミオちゃんだけど…俺はここに残る事勧められない。
地球へ行って自分の能力を試すのが一番いいと思う。」(南部)
「………」(ミオ)
「大丈夫だよ、俺らクルーが付いてるし…お姉さんもいるし…まぁサーシァ
は週に一度しか戻ってこないけど森さん夫妻はとても協力的だから…俺が
保障するよ。」(南部)
「保障?」(ミオ)
「あ…えっとね、もし森さんの所がダメだったら俺がミオちゃんの面倒
見るよ、って事。」(南部)
ミオはその言葉ににっこり笑って
「本当?南部さんが最後まで面倒見てくれるの?」(ミオ)
「任せなさい!…と言うより地球人を信じてほしいな。…ミオちゃんの
お父さんは地球人でしょ?大好きでしょう?」
ミオはそう言われて
「お父様もお母様も大好き。」
と答えた。
「ほら…お父さんとお母さんもミオちゃんが大好きで…だけどここにいても
ミオちゃんの人生何も始まらないから俺らに託すわけ。その“大好き”って
気持ちがあれば離れてても通じてる、って事だよ。地球で困った事や
辛い事があったら俺に連絡くれればいい。俺だけじゃなくてYUKIのクルー
ならだれでもいいよ。ミオちゃんを一人にしないからさ。」
ミオはじっと下を向いて考えていたけどぱっと顔を上げて
「ミオ…地球で頑張ってみようかな…」
小さな声だったけれどはっきりそう言った。
「少し…その気になった?サーシァだって不安だらけだったさ。俺たちだって
最初にイスカンダルへ向かう旅に出た時は不安だった。イスカンダル自体
本当にあるのか確証は何もなかったんだから…」(南部)
「私、お母様のと少し話してきます。」
ミオはそう言うと席を立って南部にお礼を言って部屋を出て行った
「本当に…アイツに似てるな。」
クリっとした眼と栗色の少し軽いくせっ毛…南部は食器を片付けて自室に向かった
「長官…よろしいでしょうか?」
ラウンジでくつろいでいる藤堂に守が声を掛けた
「あぁ…そちらに行こうか。」
藤堂は守と一緒にスターシアの待つ部屋に向かった
「すみません、および立てして…」
スターシアが藤堂を出迎えてソファーに座るよう勧めた。
「いよいよ明日、出航ですね。今回はミオの為にお呼び立てして本当に
すみませんでした。」(スターシア)
「長官、今日、ミオ自身が“地球へ行く”と言ってくれました。なかなか
納得できなかったみたいですが…」(守)
「そうか…自分で決断できたか…」
藤堂はまだ幼い子供が自分の意志で両親のもとを離れるという事を複雑な思いで受け止めたがそれがミオにとって一番いい方法なのは分かっているのでその思いは自分の中で止めた。
「サーシァもいる…大丈夫だよ。今は通信もできる。何かあればすぐ連絡
するから…それに今回もしばらく私の自宅で様子を見ようと思う。データー
では地球環境に合う事は分かっているが地球でミオの成長がどう変化する
かわからないから…周りが驚かないよう細心の注意を払って森さん夫妻に
託そうと思う。」(藤堂)
「細かいお気遣いありがとうございます。奥様にも…」(守)
「いやいや、家内が一番楽しみにしてるんだよ。もう孫も大きくなって
しまって…幼い子供がいることは希望に繋がっている。ガミラスとの
戦いで地球の人口は激減した。いまだに放射能汚染で苦しむ患者がいる。
もちろんそれはイスカンダルの技術で今まで救われなかった命が救われる
ようになってはいるが…新しい命や幼い命と言うものは我々から見たら
地球の宝だ…希望なんだよ。この子供たちが成長した時…碧い地球しか
知らないと言ってほしいのだよ。もちろんあの戦いを風化させてはいけ
ないと思っているが…地球はイスカンダルと同じ碧い星なんだと…」
藤堂の言葉に守とスターシアは頷いた。
「明日の出航は何時で?」(スターシア)
「はい、早朝…地球時刻5時、と予定しています。ミオは大丈夫でしょうか?」(藤堂)
「えぇ、荷物はまとめて先にアナライザーに預けました。どうか
よろしく
お願いいたします。」(スターシア)
涙をふくスターシアの肩をそっと抱いて慰める守と藤堂は固く握手をした
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト ミオ編 1 作家名:kei