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a-o-wのボツ作品集

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『魔法少女リリカルなのは 外伝  モノクロブレイク!』


「実技試験と筆記試験、共に優秀な成績を称え、君に時空管理局執務官の称号を与える。おめでとう」
「ありがとうございます」



新暦71年。私、フェイト・T・ハラオウンは今日、晴れて念願だった時空管理局執務官の肩書きを得ることができました。



「おめでとう、フェイト・T・ハラオウン執務官」
「君たち兄妹のこれからの活躍に管理局は大いに期待しているよ」

広大な部屋の一角に集まる管理局の重鎮の方々。顧問官を中心に第一事件対策部室長、第二事件対策部室長、地上本部管理部室長達にエトセトラ、エトセトラ…私に向けて大きな拍手が送られた。その中の一人、私のお兄ちゃん−クロノ・ハラオウン−が笑顔で私に拍手を送る。なんだか、照れくさいな。

「おめでとう、フェイト。今日から君も僕と同じ執務官だ」
「ありがとう、おにい…じゃない…おほん。ありがとうございます。クロノ・ハラオウン執務官」

お兄ちゃんに向かって軽く敬礼。

「あぁ、これから一緒にがんばろう。フェイト・T・ハラオウン執務官」


『時空管理局執務官』
執務官とは、事件捜査や法の執行の権利、現場人員への指揮権を持つ管理職のこと。
高い権限を持つ反面、優れた知識と判断力、実務能力が求められる。
ちなみに、執務官試験は半年に一度行われており、筆記、実技ともに合格率は15%以下のかなりの難問なんだ。

それでも、私はずっと執務官になりたかった。

あの時、5年前のあの時から私はずっとクロノと同じ執務官になることを決心し、今日まで本当に苦労してきた。途中で色々あったし、2回も試験に落ちちゃったけど、やっと私はたどり着けたんだ。

駄目だ…耐え切れない。
ちょっとでも気を抜くと嬉しすぎて声を出して喜んでしまいそう。
今は管理局の偉い人達の前なんだからちゃんとしてないと、リンディ母さんやクロノに怒られちゃうよ。
そんな中、クロノが小声で私に何かつぶやいてきた。

「こらフェイト、顔に出てるぞ」
「えっ…ごめんなさい」

やっぱり耐え切れなかったみたい。無意識中に頬の筋肉が緩んでいたみたい。

さぁ、今日から私は執務官なんだ。

今までと一緒じゃいられない。

前へと歩くんだ!




私、フェイト・T・ハラオウンはこれから次のステージへと進んでいきます!




・・・

魔法少女リリカルなのは  外伝

フェイト・T・ハラオウン


−モノクロブレイク!−


・・・

「「「「フェイトちゃん!執務官試験合格おめでとう!」」」」
「は、恥ずかしいよ、皆…」

部屋の中で無数のクラッカーの音が鳴り響く。
あれから数日後、私は地球、正確には海鳴市。もっと正確には私の親友、高町なのは の家で私の執務官試験合格祝いが開催された。
なのは の部屋のテーブルには大きなチョコレートケーキ。デコレーションのチョコにはホワイトチョコで「フェイトちゃん、執務官試験合格おめでとう」と書かれている。

「でも本当にすごいねフェイトちゃん!まさか本当に執務官になっちゃうなんて」
「ありがとう、なのは。私もすっごく嬉しいよ」

なのは はひだまりのような笑顔をしながら綺麗にケーキを切り分けていく。さすがは喫茶店の店主の娘だ。綺麗に5等分に切り分け5枚あるお皿に崩さず置いていく。
まず最初に私の手元に置かれ、続いて アリサ、すずか…そして はやて の元に置かれた。でも なのは…5等分って大きすぎないかな?

「でもフェイトは本当に頑張ったわよ!学校終わったあとも放課後残ってずっと勉強してたし、管理局のお仕事もあったんでしょ?」
「うん。ちょっと色々と大変だったけど3回目にしてようやく合格できたよ、アリサ」
「うんうん!3回目の正直って言葉が日本にはあるからね?」
「やっぱり日本って不思議。すずか はなんでも知っているんだね」

「それでも私は『2度あることは3度ある』なんて心の片隅で思っててなぁ~!」
「ちょっと はやてちゃん!」
「ははっ!ごめんなぁ?…あれ、でも確か試験日の前の日、なのはちゃんもメールでこんな事言っていたような…」
「なのはっ!?」
「にゃぁぁぁッ!!?ちょ、ちょっと はやてちゃん!!」

ケーキを食べながら何気無い話が広がっていく。
私がこうして執務官の資格を得ることができたのは私一人の力だけじゃない。
リンディ母さんやクロノ、エイミィやアリサ や すずか、それに私の親友の なのは と はやて の応援のお陰でもある。
私が悩んだ日はこうして皆が気遣って応援してくれたり、息抜きに街に何度かお出かけすることがあった。きっと私一人の力じゃここまで歩くことはできなかっただろう。

「でもフェイト~私ふと思ったんだけどさぁ。執務官の資格取るのってそんなに難しいことなの?地球には執務官なんて役職無いからよく実感が持てないのよねぇ」
「んっとね。地球で例えるなら…執務官って警察組織でいう警部みたいな立場なんだ。それに検事や弁護士の仕事を掛け持ちした職務って言えばわかるかな?」
「え、ちょっ…それって凄いことなんじゃないの!!?」
「せやで、アリサちゃん。執務官になるってことはなぁ、検事と弁護士の資格を両方一緒に取るってこととほぼ同じことなんよ?」
「つまり…フェイトちゃんは中学3年生で検事と弁護士の資格…おまけに警察になるための試験に合格しちゃったってことなんだね…うっ…」

すずかの顔が若干青ざめてる気がする。
私は地球に住み始めてもう5年経つけど、今だに全てを理解しきれている訳じゃない。
だからなんで二人がそんなに驚いているのかよくわからなかった。
検事と弁護士の資格を取るのってそんなに難しいことなのかな?
確かに執務官の筆記試験はとても難しかったけど…。

「ねぇフェイトちゃん。執務官のお仕事はいつから始まるの?」
「うん、5日後からさっそく。ミッドチルダの地上本部で勤務することになったんだ」
「そっかぁ~。それじゃあ今までみたいにあまり会えなくなっちゃうね」
「大丈夫。ちゃんとお休みももらうし、なるべく なのは のスケジュールに合わせるよ」

そう。執務官試験に合格したからゴールという訳じゃない。
スタートラインに立っただけ、これから始まるんだ。
きっと、今までみたいな生活にはもう戻れないと思う。だけど、全部自分で決めたことなんだ。

今日はしっかりと遊んで、気を引き締めてミッドに帰ろう。

大丈夫。今までだってなんとかやって来れたんだ。
きっとこれからだって大丈夫!


・・・


「管理外世界第27区での過激派同士の武力制圧の阻止。私は双方の被害がでないよう極力穏便に事を収め鎮圧せよ…との任務内容を依頼した筈だったのだが、…この報告書を見る限り、君は過激派集団を魔力攻撃による鎮圧を行ったようだね。魔力攻撃によるものだった為外傷はほぼ無かったみたいだがこれでは我が管理局がまるで武力介入組織じゃないか。これはどういうことかな?ハラオウン執務官」
「すみません…セルシア執務官長」

ミッドチルダ地上本部の広いオフィス、執務官室で私は頭を下げる。
作品名:a-o-wのボツ作品集 作家名:a-o-w