a-o-wのボツ作品集
その執務官室の一番奥で私はセルシア執務官長に怒られていた。後ろのデスクから何事かと他の執務官達の視線を背中で感じすっごく痛い。
どうしてこんな事態になっているのでしょうか?簡単に説明するよ。
そう…始めての依頼を受け持った私は依頼通りに任務を遂行したと思っていたけど、それはあくまで事実上だけの話だった。実際、私は互いのリーダーに話を持ち込んだけど、なかなか聞き入れてくれなかったので、5年前の闇の書事件の時と同じようにぶつかりあったら思いが届くかな…って思ったの。
だけど現実は違った。
結局、双方の過激派組織は私に襲いかかるだけであって、とりあえず自己防衛という名目で戦闘を行い、鎮圧を図った。
事態はひとまず収まり、ミッドに帰ってきて報告書をだして…そして今に至る。
はい、説明はおしまい。
「はぁ…フェイト・T・ハラオウン執務官。今回は初の管理外世界での任務ということだったのでこの件はこれ以上大きくする気は私には無い。だけど解っているね?こんなことを続けられても管理局側も困るんだよ」
「はい…申し訳ございません」
この人は時空管理局執務官のトップ、「セルシア・ヴィッツ執務官長」。そもそも執務官といっても大きく分けて二つ、独立派と内勤派が存在するんだ。独立派は自身が得意とする種別の事件を専任で指揮・担当する執務官。中には管理局を離れて自身で事務所を立ち上げて依頼を受け持っている執務官もいるみたい。そして内勤派は所属部隊の法務を全般的に担当する執務官達のことなんだ。内勤派は管理局地上本部のこの執務官室でミッドチルダ内や各世界で起こった案件を依頼されて対処する一つの組織みたいなもの。その執務官のトップに立っているのがこのセルシア執務官長。
綺麗な金髪で肩ぐらいまであるストレートヘア。一見すれば女性と見間違えてしまうような整った顔立ち。育ちの良さが伺える。歳は…たしか26歳ぐらいだったかな?それでも管理局内ではかなりの出世みたい。まあ執務官事態誰でもなれる役職じゃないし、人手不足なんて言われてるから…。
「それはそうとテスタロッサ執務官。実は君に頼まれてほしい案件が一つあるんだ」
「はい、なにかな……じゃなくてっ…なんでしょうか?」
うぅ…やっぱり敬語は難しいな。
「管理局から少し離れたところのミッドチルダ南部…高級住宅市街地に、一人、時空管理局執務官が居るんだ。君には今、ミッドチルダで起こっている一つの案件をその人物と一緒に遂行してほしい。これが書類だ」
「えっ、二人でですか?」
セルシア執務官長から「重要案件」と書かれた封筒を受け取る。
別に一つの任務を二人の執務官で着くことは不思議ではない…けど、ただでさえ人手不足の管理局にとってこんなことは非常に希だな。嘱託魔道士の時もそんなことなかったけど。
そんなに重要な案件なのかな?
「それに、これは君にとってこれからの成長も兼ねてという意味合いもある。確かに君は闇の書事件での実績やそれ以降での優秀な成績を持ち合わせている。しかし君はまだ若すぎるし、世界の大きさを知らない。これは良い機会だ。是非とも『彼』の元で学んでくると良い」
「わかりました。セルシア執務官長」
執務官長に敬礼っと。
よし、今度は忘れなかったな。
「…あの、そういえば一つ、聞いておきたいことが…」
「ん?なにかな」
「多分その人、独立派の人ですよね?独立派って私達みたいな内勤派と違ってクセが強いって有名ですけど…どんな人なんですか?」
「うん、察しが良いね」
セルシア執務感長は席を立ち、後ろの大きなガラスの前に立った。ガラス越しから広大なミッドチルダの風景が目に映る。
なんだろう…すっごく、嫌な予感。
「君に読み通り、一癖も二癖もある。とんでもない変わり物だよ」
・・・
「迷いそうだな…バルディッシュ、ナビをお願い」
−Yes sir−
愛車に乗ってミッドチルダ南部の高級住宅街のとある事務所を目指す。ここ近辺は主に企業の重鎮や別荘が並ぶ豪邸がズラリと並ぶ住宅街。
色々と道が入り組んでていてバルディッシュにナビを表示してもらった。
スクリーン上に赤い点、目的地だ。
そんなに距離は遠くない。もう近くなんだな。
「ここを曲がって…、あった」
車を止めて、外に出る。
目の前には2階建ての豪邸。事務所というものには程遠いな。入口の横には高級車が3台止まっている。私のよりグレードが上だ…凄い。
階段の先に玄関があるのでおそるおそるベルを鳴らす…。
−キンコーン…−
「こんにちは」
少し待った。
するとドアの奥から歩く音が近づいてくる。
ドアが開くとそこには執事服を身にまとった60代の口髭がよく似合う長身なジェントルマンが立っていた。
「いらっしゃいませ、レクサス執務官に御用ですかな?」
「あ、はい。時空管理局地上本部からやってきました、フェイト・T・ハラオウンと申します」
「おやおや、あなたが…なんともお若い。はっは。さぁどうぞお上がりください」
この人。ここの執事さんなのかな?すっごく良い人みたい。
私は口髭がよく似合う長身なジェントルマンに連れられて家の中へと案内される。
廊下には高級そうな絵画やツボばかり。
そして一回の奥、応接間っていうのかな?そこに大きな机と椅子。その奥に窓越しに外を見つめている男性が立っていた。
スラリと綺麗な姿勢。
そして何よりの特徴。
執務官の制服の色は基本は『黒』
だけど…彼が着ている執務官の制服の色は、
『白』だった。
それはもう汚れが一つもない真っ白でした。
「レクサス様。お客人をお連れしました」
私は恐る恐る挨拶をしようとその男性に近づく。
「あのっ…こんにちはっ…」
頭を下げようとした−−−。
その時だった。
「どうぞよくここまでお越し下さいました!僕は時空管理局執務官のエリート中のエリィィィィィィトッッッ!!…の『レクサス・A・インフィ』と申します。金髪がよく似合うお嬢さん。あなたのお名前は?」
「えっと…フェイト・T・ハラオ…」
「フェイトさんッ!!なんともお美しいお名前ッ!!どうぞここへお座りください。親睦を深めたいところだがその前に依頼の確認ださっそく案件の内容を確認し始めましょう。『二人』…で・ね?」
彼、『レクサス』という人物のウインク一つ。頂きました。
私はレクサスに手を握られほぼ強制的に黒革の高級そうなソファーに座らされられる。
レクサスは狙ったかのように私のすぐ隣に座った。
「ちょ、ちょっと!」
「まぁまぁ時間はまだたっぷりあることですし、ゆっくりお話ししましょう!あ、ヒツジさ~ん。この前取り寄せたボージョレヌーボ二つ!いっちばん高級なやつお願いしま~す!」
「え、ヒツジ!?」
「えぇ、私、執事の『ヒツジ・フーガ』と申します。今後、お見知りおきを…」
最初に現れた長身で口髭が似合うジェントルマンさんのお名前はヒツジっていうんだ。執事のヒツジか…なんというか…うん。
作品名:a-o-wのボツ作品集 作家名:a-o-w