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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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さくらと桜餅は花より餡子。





川原沿いの桜が今年はそれはきれいに咲いて、仄かに視界がピンク色で。いつもは通り過ぎるだけの道を花見と洒落込んで、近所の和菓子屋で桜餅(時期的にコレだろう)をチョイスして、自販機で緑茶を買って、ぶらりと桜並木が1km続く道へと降りる。ひらひらと舞い落ちる花びらに「おお」と感嘆を漏らしつつ、漂う甘い香りに目を細め、呆けていると前から見知った顔が。「あれ?」と思う間もなく、うさぎさんが突進してきた。

「よう!久しぶり!!」

広げられた腕に怯む間もなく捕まって、ぎゅうっとされる。じいちゃんの一件以来、うさぎさんの中で俺は身内認定されたらしく、会えば必ずハグをされる。何と言うかされる度に俺が狼狽えまくってしまうのを面白がってる風だ。…でも、最近は流石に慣れた。
「アレ?狼狽えねぇな?」
「…いつもされてれば慣れます」
「チェ。つまんねーの!」
腹いせついでに頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。…ったく、このひとは。ぐしゃぐしゃになった髪形を直してると、連れの髭さんがニヨニヨした顔で俺を見た。

「ギルばっか、ずるーい!お兄さんともハグしようか?」
「え!?」
「んじゃ、親分ともしよか?」
「え?!」

逃げるのが遅れた俺は、大変な目に遭った。髭さん、何気に人の尻触らないでください。親分さん、頭さらにぐしゃぐしゃするの、やめてください。唯でさえもクセっ毛で困ってるのに、大爆発になってしまった。ニヨニヨしながら何か仕掛けて来ようとする三人から距離を取って、髪型を直す。それにほわんと親分さんが目を細めた。
「ハムスターみたいやんなぁ」
「小動物ぽいよねぇ」
「菊もこんな感じだよなぁ。あいつは撫でると怒るけど」
俺に和むなよ。…俺、今月から大学生になるんだが、どうも子どもに思われているような気がする。…外国から見たら、アジア系って幼い感じに見えるらしいな。…まさか、中学生には思われていないとは思うが…。取り合えず話を逸らすべく口を開いた。

「…三人とも、何してるんですか?」

この三人、冬、夏と、ニュースでも話題に上るようになった某イベントが近づく度に、一緒に来日してる。ウチに毎日、足しげく夜食を買いに来る。初日はそれなりにちゃんとまともな格好をして来店するが、日が経つにつれ段々その格好がよれよれのトレーナにジャージ。半纏、厚手の靴下、サンダル履き、額に冷えピタ(夏場は何か酷いアレなTシャツ(○○は俺の嫁!って書いてある)にハーパン、冷えピタ)と格好が何か余裕がないときの本田さんみたいになってくるのだ。目の下には隈が酷いし、半纏にトーンって言うんだっけ?漫画に出てくるやつできれっぱしみたいなのが付いてることがあるんだが、触れないほうがいい気がして見て見ぬフリをしている。
「散歩だよ。菊が桜がきれいですよって言うから」
「きれいだよねぇ。ウチの国ではちょっと見ない光景よ」
「花びらがふわぁってなるところがええなぁ」
三人とも頭上を見上げ、「ほうっ」となるのに和む。桜の花は国花で日本人なら誰もが好きな花で、これを見ると「春が来た!」って浮かれてしまう花だ。
「日本の春っていいよなぁ。飲んで騒いで馬鹿騒ぎ出来るしよ」
「開放的になっちゃうよねー」
「開放的になりすぎなんだよ、お前は。日本でアレやったら猥褻罪で捕まるぜ」
「ちゃんと、股間は隠してるよ?」
「そういう問題じゃねぇーだろが。…ってか、俺、あの後、股間から風邪引いて、大変だったんだからな!」
「あれぐらいで、風邪引くか。ギルちゃん、ほんま病弱さんやな。トマト食わへんからやで」
「俺の病弱とトマトは関係ないだろ。このトマト馬鹿!」
「あるで!親分、トマト食ってるから風邪なんか引いたことあれへんし!」
「お前んとこは国が温かいだろ。俺んとこはまだ寒いっての。…はあ…」
…股間から風邪引くって、ノーパンで外出でもしたんだろうか?うさぎさんは…。後、髭さん、股間隠しててもまっぱだったら、おまわりさんに捕まると思います。…親分さんは本当にトマト好きだな…。欧米では四月に裸祭りでもやってんだろうかと俺が呆れつつ、何だか感心しているとうさぎさんが俺が手に提げていた袋に気付いた。
「…それ、ショウゲツドーの袋だよな」
「目敏いですね。…そうですよ」
「あそこのマンジュウとドラヤキ好きなんだよ。…で、マンジュウか、ドラヤキか?」
うさぎさんがwktkした顔で訊いてくる。
「違います。桜餅ですよ。ここで食べようと思って、買ってきたんです。…良かったら、一緒にどうですか?」
本当は家族の分を買ってきたたのだが、それは帰りにまた買うことにして、空気を読んでそう言うと、にぱあとうさぎさんの顔が綻んだ。…子どもみたいだ。
「いいのか!?」
「はい。でも、飲み物は俺の分しかないので自分たちで買ってきてくださいね」
そう言うと、三人はじゃんけんを始めた。外人さんが真剣に「最初はぐー!」とか言ってて、和む。じゃんけんはうさぎさんが負けた。悔しがってるうさぎさんに髭さんと親分さんが小銭を渡す。
「俺、日本茶。やっぱ、和菓子食べるなら、さっぱりしたのがいいよねー」
「親分も!」
それを受け取り、うさぎさんは口を尖らせたまま、俺を振り返った。
「…自販機、どこだ?」
「そこの土手を上がったところですけど、一緒に行きましょうか」
「お前、やっぱイイ奴だな!」
ハグされそうなのを寸前で躱すと、うさぎさんは残念そうな顔をした。
「逃げんなよ!」
「逃げます。勘弁してください」
桜餅の入った袋を髭さんに預け、二人に「早く、戻って来いよー!」と見送られ、俺とうさぎさんは土手を上がる。
「サクラモチって、どんな味すんだ?サクラが入ってんのか?」
「桜は入ってないですけど、餡子ものですよ。簡単に言えばおにぎりの小さいのって言ったらいいのかな。海苔の代わりに桜の葉っぱを塩漬けにしたのが巻いてあるんですけど」
「甘いのをしょっぱいので巻いてるのか?味的にそれって、どうなんだよ?」
「餡子の甘さを程よくするんですよ」
「…?良く解んねぇ」
「食べれば解りますよ」
土手を上がって、近くの小さな商店の自販機でお茶のペットボトルを三本買って、土手を下る。
「遅いよ!」
「遅くねぇよ!、ほら」
お茶を配って、芝生の上に腰を下ろす。…シート持って来れば良かったなと思ったが、まさかこんなことになるなんて思ってなかったしな。…袋から、箱を取り出し、蓋を開ける。覗き込んだ髭さんが声を上げた。
「和菓子は何かかわいいのが多いよね。このピンク色はどうやって出してるんだ?」
「食紅みたいですよ」
「この包んである葉っぱは食ってもええんか?」
「食べても大丈夫です」
「マンジュウ…じゃなくて、本当、オニギリみてぇだな。この粒々、コメか?」
「言われてみれば、オニギリみたいだね」
「粒々は餅米です。蒸して柔らかくしたので餡子を包んであります。触感は餅よりちょっと柔らかい感じ」
「へぇ〜」
三人は一頻り桜餅を観察した後、摘んで、ぱくり。
「…うめぇ!」
一口食べて、二口目を収めたうさぎさんが言う。
「日本の食べ物って、こういうお菓子とか料理とかもだけど繊細できれいなものが多いよね」