コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ
コンサートは最初から最後まで、息も出来ないほどに凄かった。オペラ椿姫にピアノのアレンジを加えた三幕からなる構成で、素人の俺には何て表現したらいいのか解らないほどに凄かった。演奏が指揮者の奮う指揮棒がぴたりと止まるのと同時に全ての音が止まり、静寂に包まれる。静まり返ったホールに観客が息をするのを思い出すと同時に割れんばかりの拍手が鳴り響き、掛け値なしのスタンディングオベーションが指揮者にオーケストラに、ピアニストに贈られらた。
「凄い感動しました!」
率直にローデさんに告げれば、ローデさんは嬉しそうに笑ってくれた。
「ヴィオレッタの死に直面し、絶望の中に新しい何かを見出そうとする細やかな心情を表現するには、このピアノしかなかった。キュウゾーの調律で自分が思い描いていた彼女を表現することが出来ました」
貴族さんは満足げに息を吐くと、隣に立っていたうさぎさんを見やった。
「…さて、明日はあなたと演奏会の予定ですが練習はしてきたのでしょうね?ギルベルト」
「お前にボロクソ言われない程度にはな」
うさぎさんがフンと鼻を鳴らす。…この演奏会のことは次回、うさぎさんのプロイセン講座のことと一緒に報告したいと思う。
作品名:コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ 作家名:冬故