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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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最終兵器とうさぎさんとハンバーガー君と俺と。







来客を知らせるチャイムに顔を上げれば、ニヨニヨ顔のうさぎさんと何故か、ハンバーガー君。うさぎさんはいきなり、俺の肩を掴んだ。

「聞いたぜ。お前、アーサーに最終兵器を食わされたらしいな?」

最終兵器とは、何ぞ?…先日の出来事を思い返して、アレのことかと思い至る。…確かにアレは何と言うか、食物兵器とでも言えばいいのか…。俺はぼんやりと先日のことを思い出す。眉毛さんが、

「今度、持ってきてやるよ!…べ、別にお前に食べさせたいとかそう言うんじゃないからな!」

と言うのを、俺は社交辞令に受け取って、「楽しみにしてます」とうっかり言ってしまったのがコトの始まりだった。その一週間後、眉毛さんは手製のスコーンを持参して、俺に差し出してきた。きれいにラッピングされたそれを受け取り、礼を言った。その場で食べて感想を教えてくれと言うので、ラッピングを解いて出てきたものはハンバーガー君が言っていた石炭みたいな塊。…俺の知ってるスコーンじゃなかった。俺の知ってるスコーンは日本風にアレンジされて食いやすくなったもので、本場のスコーンはこんな感じなのかと、俺は変な思い違いをして、それを疑いもせずに口に運んだ。ガリッと言う歯ごたえと、焦げた…炭を齧ったらこんな味になるのかみたいなざりざりとした触感とどろりとした生っぽい小麦粉の味がした瞬間、何とも言えない味わったことのない辛いのと甘いのとしょっぱいのと酸っぱいのがいっぺん混ざった何かがベロを直撃し、俺は気を失った。…気がつけば事務所の天井が見えて、本田さんが心配そうな顔で俺を見下ろし、顔をぐしゃぐしゃにした眉毛さんが居たのだ。

「死ななくて良かったんぞ!だから、言ったじゃないか!」

ハンバーガー君が言う。
「…いや、本場のスコーンってああいう食べ物なんじゃないですか?」
俺がそう言うと、

「「そんな訳ないだろ!!」」

二人して揃ったツッコミが俺に入った。
「…君、天然なのかい?」
「初めてそんなこと言われましたが、アレはスコーンと違うんですか?」
「違う。俺も最初、ああいう食い物だって思ってたんだけどよ、フランシスに同じモン作ってもらったら全然違うのが出てきたし。…あ、コレ、作ってもらって来たんだ。食ってみろよ」
下げてた紙袋から、オシャレにラッピングされたものを差し出される。それを受け取り、ラッピングを取ると俺の知ってる店で売ってるのに似ているスコーンが出てきた。
「…全然、違いますね」
「味も違うぞ。本当は蜂蜜とか、クロテッドクリームとかジャムとか塗って食うんだけど、フランシスの作るのはそのままでも美味いぜ。食え」
仕事中と思ったが、客はハンバーガー君とうさぎさんのふたり。店長は二階で仮眠中。…本当はいけないんだが、余りにも美味しそうだし、ちょっと小腹も空いたしで、唆されるがままに口に運んだ。
「…美味しい。…ってか、超、美味しいんですけど!!」
外はサクっとした歯ごたえで中は柔らかく微かに甘い。ちょっと固いミルクパンみたいな感じだ。
「だろ?…コレが本当のスコーンだからな。…でも、アーサーも悪気があった訳じゃないんだ。…なんつーか、アイツ、自分の料理が壊滅的にマズイってのを理解してないみたいでよ」
「そうなんだぞ。何か、フランシスと張り合ってる部分もあるしね。下手の横好きって言葉があるじゃないか。アレを地でいってるから、本当に始末に終えないんだぞ!」
「…はあ。…でも、一種の天才ですよね。何で、あんな甘いのと辛いのと酸っぱいのとしょっぱいのが同時に来るのが不思議です」
「…あー、アレは凄いよな。俺、親父がお花畑から笑って、手振ってるのが見えたし」
「あ、俺もです。まだ、こっちに来るなって、死んだ曾ばあちゃんと曾じいちゃんに怒られました」
小さい頃に死んだ写真でしか顔も知らない曾じいちゃんと曾ばあちゃんに三途の川の対岸で怒られるとは思わなかったが。臨死体験出来るって、ある意味、スゲーかも。そう思いつつ、ハンバーガー君を見やれば、首を傾けている。
「お花畑って、なんだい?」
「知らないほうがいいぜ。…ってか、死にそうもねぇし。…前から思ってたんだけどよ、お前、アーサーのアレ、平気で食ってるよな?」
うさぎさんがハンバーガー君を見やる。
「慣れなんだぞ!…本当にどうしようもなく不味いけど、…何でか、たまに無性に食べたくなるんだ。…本当に不思議だよ」
慣れでアレを普通に食えるのか、ハンバーガー君は。
「お前にとっちゃ、アレがお袋の味ってヤツなのかもな」
「…ったく、失敗したよ。フランシスの作るものの方が美味しいって解ってたのに、…彼が泣くからさ…。…本当に不味いし、食べたくないんだけど、…食べたら、笑ってくれるから…」
ごにょごにょと語尾を濁らせ、ハンバーガー君がそっぽを向く。うさぎさんはニヨリとそれを笑って、ハンバーガー君の頭を撫でた。
「お前、超可愛い!…たまには、アーサーにそう言ってやれよ!」
「な、やめてくれよ!俺は世界のヒーローなんだぞ!可愛いなんて言わないでくれるかい?!」
うさぎさんの手から逃げようと、ハンバーガー君がうさぎさんの腕を掴むがうさぎさんはそれを意に返すでもなく、ニヨニヨしながらハイパー撫で撫でタイムに突入。
「触り心地が小鳥の次に俺好み!」
「ちょ、本当にやめてくれよ!!」
ムキムキさんといるときより、うさぎさんがハンバーガー君といるときの方がお兄ちゃんっぽく見えるのは、俺の気のせいか?…微笑ましい。和む。…ってか、わざわざ、眉毛さんのことを弁解に来てくれたのかなと思ったらちょっと、感動した。


まあ、そんなことがあってから、暫くして、俺は何故か本田さんにご自宅に招かれた。まさか、コンビニの店員とそのお客のお付き合いを超えて、お付き合いすることになるとはと思いつつ、近所で評判の和菓子屋でどらやきを手土産に伺えば、本田さんの家の前には微妙な顔をした眉毛さんが居た。

「こんにちわ」
「…おう…。あー、その、先日は、悪かった…な…。…怒ってるか?」
「いいえ。気にしてませんよ。また、お店の方にも来てください。待ってますから!」

俺がそう言えば、眉毛さんはほっとしたように笑った。

「Thank you. …あー、それでな、この前の侘びって訳でもないんだが、今日は菊に頼んで庭をちょっと借りたんだ。…俺、茶を淹れるのは自信あるんだ。…飲んでってくれるよな?」
「本場ですもんね。ごちそうになります」
「おう!本場の美味しい紅茶を淹れてやるよ!」
眉毛さんに案内されて、庭に回れば和風な庭に英国式の庭園にありそうな椅子とテーブルに菓子とサンドイッチの乗ったティースタンドに何だかとっても高そうな白磁のティーセット。テーブルを本田さんとハンバーガー君とうさぎさんが既に囲んでいて、俺はぺこりと頭を下げた。
「おう、来たか!待ったぜ」
「遅いんだぞ!」
「いらっしゃい。どうぞ、座ってください」
それぞれに声を掛けられ、俺は本田さんに手土産を渡す。…こんなことなら洋菓子にしておけば良かった。
「わざわざ、気を遣わせてすみませんねぇ」
「いいえ。…洋菓子にすれば良かったですね」