続 さらば宇宙戦艦ヤマト ミオ編 5
「新婦の入場です。」
真っ赤なヴァージンロードが倍の広さに敷かれ守を中心に右にサーシァ、左にミオが腕を組んでそのヴァージンロードをゆっくり歩いて来た。中央で島と南部が白い手袋を持ってその様子をにこやかに見ている。
「すみません。」
守は島と南部の手前で止まると
「森さん、この先、二人を新郎の元へお願いします。」
と言った。突然の事でユキの父は驚いた。
「ここまですばらしい娘に育ててくれたのは森さんです。新郎にバトンタッチ
するのは森さんの役目です。…お父さん、お願いします。」
守の眼に涙が溜まっていて流すまいと堪えていた。ユキの父は突然の事で立ったままどうしようか考えていたが母と藤堂が後押しした。
「森さん、行ってください。新郎が困っています。」(藤堂)
ユキの父は慌てて参列者の席を離れると二人の前に立った。
「お父さん、お願いね。」(サーシァ)
サーシァが声を掛けるとユキの父は耐え切れなくなって涙が溢れてきてしまった。守は“お願いします”と声を掛けると参列者の一番後ろの席に向かった。
ゆっくり、ゆっくりヴァージンロードを歩くと目の前に島と南部がいた。二人の横で止まるとサーシアとミオは組んでいた腕をそっと抜いて
「「お父さんありがとう。…だけどいつまでも娘、だからね。」」
と言ってサーシァは島と腕を組み、ミオは南部と腕を組んで牧師の元へ歩いて行った。
会場は南部財閥の持っている海外の小さなリゾートホテル。ガミラス攻撃前ならサンゴの海が広がっているとてもきれいな所だった。
「お疲れ様。」
披露宴は“固い事はしない”と言う二組のカップルの希望で両親以外はヤマトのクルーと一部の軍関係だけを招いてビュッフェ形式で行われた。目の前に広がる碧い海を見ながら潮風に当たっているユキの父の元に母がやってきた。
「お前も…。」
父がねぎらうと母はにっこり笑った。父は“年を取ったな”と思った。つい先日までユキとよく似ている、と思っていたが……
「ユキが生きていたらいくつになってたんでしょう…あの子たちがいたから
全く考えずに生きてこられたわ。」
母の視線の先には幸せそうに笑う二人の姉妹がいる。
「そうだね、そうだった。時間が早く過ぎると言う事は幸せだという事なのだ
ろうね。」
眼下に広がる海を見つめるふたりに声を掛ける人がいた。
「森さん。」(守)
「守さん、先ほどは驚きました。全く準備していなかったから…前以って言って
くれたら心の準備しましたのに…」(父)
「前以って言ってたら断ったんじゃないですか?…森さんにはどう感謝の気持ち
を表したらいいかわかりません。血の繋がらない子供を育てると言う事は
とても難しい事だと思います。しばらくずっと一緒にいてこんなに優しい娘
に、かしこい娘に育って…本当にありがとうございました。」
守とスターシアが頭を下げた。
「感謝したいのは私達の方です。サーシァは私たちにとても気を使ってくれ
ました。ミオは一生懸命甘えてくれました。いつしか自然に過ごせるように
なりましたが彼女たちの努力は本当に大変だったと思います。私達で足りない
ところはクルーの皆様が支えてくれました。進くんとユキのおかげ…ですね。
私たちは何も…ただ、何があっても味方だよ、と言い続けました。ユキに
とって私達は味方になってあげられなかった…だからユキにしてあげられな
かった事をあの二人にしてあげたかったんです。」(父)
「そうですか…」(守)
「サーシァは見た目年齢が伴ってたので成長が落ち着くまではちょっと大変
でしたがその後は順調で…ミオは見た目年齢と精神年齢が全く違っていた
ので国立の小学校が受け入れられないと…ミオはどこにも自分は受け入れて
もらえない、とかわいそうな思いをさせてしまいましたが長官がしっかり
ミオを支えてくれました。その時一番力になってくれたのが南部くんでした。
南部くんは家族全員でミオを守ってくれました。すばらしいご両親です。
島くんの家は普通のサラリーマンの家庭です。うちの延長のような感じな
のでサーシァも困る事はないでしょう。」(父)
「森さんが言うなら大丈夫でしょうね」(守)
披露宴は一晩中続いた
作品名:続 さらば宇宙戦艦ヤマト ミオ編 5 作家名:kei