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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 16

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「……まあ、深くは追求せんが、シレーネの魔術は人の身には重荷だ。貴様一人運ぶのならどうという事はないだろうが、俺達も運ぶのなら反動は大きいぞ」
「ご心配なく、覚悟の上ですから」
「なんだか知らないけど、楽できるんだよな? そいつはいいや」
「……では、センチネルさん、バルログさん。私に触れてください。灯台頂上までワープします」
 センチネルとバルログがアレクスに触れると、アレクスは目を閉じて念じた。予見の力で行き先を心に映し出すと、続いて体をその場所へ移動させる準備をする。
「行きます……!」
 アレクス達の体は、水泡へと変わり、吹雪の吹きすさぶ空間から姿を消した。
    ※※※
 吹雪の激しいマーズ灯台の頂上に鎮座していたのは、巨大な体躯に、高齢の樹木のような脚、背中に大きく広がる翼を持ち、三つの首を持つドラゴンであった。
 そのドラゴンの傍らに、岩石に目玉か一つ付く謎の物体が浮かんでいる。
「うひゃあ! こいつはデッカいドラゴンだなぁ!」
 バルログは、手応えのありそうな相手に喜々としていた。
「きおったか、錬金術を復活せんとする者よ……」
 声は一つ目の岩石から発せられていた。見たところ発声器官の類などまるでみられない。耳に聞こえたと言うよりは、心に響いたとした方が近い。
「……貴方が先生の言っていた異形のもの、ですか……」
 アレクスは何とか声を出した。センチネルに忠告された通り、複数人で長距離をワープしたせいで、体に予想以上の負荷がかかっていた。
 まるで心臓を鷲掴みされたかのように胸が痛み、声を出すのもかなりの苦であった。
「俺の邪魔をすると言うか? ならば斬る」
 センチネルは剣を抜いた。
「ちょぉっと待てぇセンチネル、お前ばっかりずるいぞ! 俺様にもやらせろや!」
 瞬間、センチネルの刃は、バルログの首にぴたりと付けられた。
「……俺の邪魔をする者は例外なく、敵だ。邪魔をするなら、貴様ごと斬る……」
「てっ、てめえ!? センチネル!」
「仲間、割れを、している……くっ……。ハア……、ハア……、場合では、ないでしょう……」
 アレクスは苦しみながらも、二人を仲裁した。
 アレクス達の心に再び声が響いた。
「これは私が出す最後の関門、ドゥーム・ドラゴン。もしこの関門を突破できたのなら、灯台を灯すがいい……」
 宙を浮遊する岩は、一つしかない目を閉じると、その姿を消した。
「関門、ですか……。確かに、これは、苦労、しそう、ですね……」
 アレクスは胸の激しい痛みを手で抑えながら、マーズスターの入った、ミスリル製の袋を取り出した。そしてその袋をセンチネルに差し出す。
「……申し訳、ありませんが。私、は、戦えません……。貴方、ならば、あの……、ドラゴンくらい、余裕でしょう……。倒したら、これで、灯台を……!」
 アレクスは、マーズスターがセンチネルの手に渡るか否かの所で、激しく咳をした。マーズスターの入った袋はセンチネルには届かず、こつんと音を立てて、地に転がった。
 センチネルはがちゃ、っと甲冑を鳴らしてしゃがみ、転がったマーズスターを拾った。そしてそれをバルログに投げ渡した。
 バルログは慌ててそれを受け止める。
「……さっさと帰れ。今の貴様はバルログ以下だ」
 アレクスは、よりによってバルログと比較され、少し気になったが、自分が足手纏いなのは重々承知していた。
「頼みましたよ……!」
 アレクスは念じ、アネモス神殿目指して瞬間移動した。
 アレクスが姿を消した後、センチネルは三首のドラゴンへ切っ先を向けた。
「バルログ、こいつは俺の獲物だ。貴様はアレクスから預かった物を持っていろ。馬鹿な貴様でも、それくらいできよう……」
 後ろのバルログの文句には耳を向けず、センチネルは一瞬にしてドゥーム・ドラゴンに接近した。
 センチネルは、ドラゴンの前足を打ち、体勢を崩すと、そのまま左側の首を切り落とした。切り口からは血が噴き出ることはなく、首は光を放って弾け飛んだ。
「これは……。どうやら、これの正体は、ドラゴンではないようだな……」
 センチネルは飛び退き、相手と間合いを開けた。
「ドラゴンじゃない? だったらコイツは何なんだ?」
 バルログの問いに、センチネルは答えない。彼の問いの答えは間もなく現れたからだ。
 切り落とした首が、光を放つのを止めると、首は人間の姿に変わった。赤茶色の髪をした、そこそこ年の行った女である。
「こいつはたまげた! まさか、このドラゴン、元は人間だとは!」
 バルログは、野太い声で笑い声を上げた。
「……一体どうしたことかは知らん。が、こいつは俺の獲物に変わりはない……。バルログ、人間にもドラゴンにも手を出すな……」
 センチネルは再び間合いを一気に詰め、今度は右側の首を斬り上げ、落とした。
 首は同じく、光と共に弾け、正体を露わにした。次は焦げ茶のボブヘアーに、口髭を少し蓄えた、初老の男に変化した。
 一気に首を二本も斬り落とされ、ドゥーム・ドラゴンに動揺した様子が見られたが、体は本能のままに反撃に打って出た。
 中心の真っ赤な顔をした首は、その巨大な口を開き、高熱を持った光線を放った。
 ブラスター・ブレス。このような名を付けるのに相応しい、あらゆる物を吹き飛ばし、焼き尽くす威力のあるブレス攻撃であった。
 しかし、センチネルは、迫り来る光線には、全く動じることなく、徐々に距離を詰めてくる熱光線を、構えもせずにただ立ち尽くしていた。
 ついに光線はセンチネルを包み込んだ、かに思えた。
 なんと光線は、センチネルの前で二つに割れ、消失していったのだ。
 センチネルの鉄仮面の中心には、核をなす、水色に光る玉が埋め込まれている。これがセンチネルへのエナジー全てを拡散していたのである。
 ついに首一本になったドゥーム・ドラゴンは、しゃにむに様々な攻撃をしてくる。しかし、そのどれもが、センチネルによって無効化され、拡散された。
「……もう済んだか?」
 攻撃の手が止んだドゥーム・ドラゴンに、センチネルは半ば挑発的に言った。
「グアアアア!」
 ドゥーム・ドラゴン咆吼をあげると、全身を輝きに包み翼を広げ、上空に飛び立った。
「逃げたのかぁ、あいつ?」
 バルログには、ドゥーム・ドラゴンが逃げ出したかのように思えたようだが、センチネルは首をもたげ、上空を見た。
 上空では、ドゥーム・ドラゴンが相も変わらず光り輝いていた。その姿はまるで第二の太陽である。
 その第二の太陽は、周囲からエネルギー体のようなものを吸収し、その体をどんどん巨大化させていった。
 そして、はちきれんばかりに膨らんだ球体となったそれは、周囲にも光線を放ちながら、センチネルのいる灯台頂上に向かって、極太の光線を撃ち出した。
 破滅の光の群を束ねる、巨大な一条の光線、ルイン・クラスト。この名こそが全てを語るに足りた。
「うわわ! 奴め灯台ごと俺様達をぶっ飛ばすんじゃねぇか!?」
「騒ぐな、耳障りだ……」
 慌てふためくバルログをよそに、センチネルは恐ろしいまでに冷静であった。