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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 16

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 一番カーストに恨みを持っていたのはシンだった。
 自身も命を狙われたという事もあるが、それよりも、あの時弱り切ったリョウカをも殺そうとしていた事が憎らしかった。
「あの時もしも、リョウカが殺されていたら、イリスは復活できなかった。そうなれば世界は……! だからこそカーストが死んだ今も、オレはこいつを許せない……!」
 シンはロビンの腕の中で、永遠の眠りについたカーストに、歯噛みして睨み付けた。
「シン、もう彼女は二度と現世には蘇ることは叶いません。彼女の生前の行いは余りにも惨たらしいものでした。なので、転生の輪廻から外れ、彼女は消えてなくなりました。そう、私が依代としていたリョウカのように……」
「消えて、なくなった?」
 イリスの言葉にシンは二の句が続かなかった。
「はい、生前悪の限りを尽くした人の子は、天界へ逝く事はできず、すぐにその魂は死神へ渡り、無に帰します……」
 輪廻から外れた魂は、女神であるイリスによると、死神の生きるための力へと変わるのだという。
 死神は大層食い意地が張っており、魂のみならず、現世に骨身も残さない存在であった。
「っ!? おい、カーストの身体!」
 ジェラルドが叫んだ。
「アガティオまで!?」
 同時にガルシアも叫んだ。
 二人のみならず、全てを理解するイリス以外は、皆一様に驚きを見せていた。
 カーストとアガティオの遺体は、驚くことに、霧と化して足元から生滅し始めたのである。
「始まりましたか……」
「イリス、これは一体!?」
「先程申し上げたように、死神の贄と化しているのです」
 骨身も残さないどころか、髪の毛一本たりとも残さないほどの勢いで、二人は消失していく。
「死神はどこかにいるのか!? まさかオレ達まで食おうなんてしてないよな!?」
 ジェラルドは死神の存在の根拠を目の当たりにし、慌てた。
「彼らは死人の近くに寄らずとも、亡者の魂、身体も吸い取ります。生者の魂は、彼らには大きすぎます、狙われることはありません」
 イリスの言葉によると、生きているロビン達は安心である、というようなものであったが、とても落ち着いていられるような状況ではなかった。
 消滅は凄まじい速さで進んだ。
「カースト! カースト……!」
 ロビンの叫びも虚しく、カーストは髪の毛一本も、骨のひとかけらも残さず霧散した。
 アガティオの遺体もほぼ同時に消滅してしまった。
「そ、そんな……、人が消えてしまうなんて……!?」
 シバは目の前で起きた現象に恐怖し、膝をふるわせた。
「落ち着くんだ、シバ」
 ガルシアは恐怖に震えるシバを支えてやった。
「……思えば、確かにあいつらは灯台解放の為なら、手段を選ばない奴らだったな」
 ガルシアはこれまで共にいた、プロクスの戦士達の事を思い返した。 自分達の故郷の為とはいえ、一族以外の人の命など何とも思わないような者達であった。
 邪魔する者は、例えそのような意志の無かった人間であっても、彼らが邪魔と判断した者は、女子供、老人問わず手にかけていた。
 死神に付け狙われていたのも仕方がない事だったのではないか、ガルシアは思うのだった。
「死神の腹に収まりたくなかったら、悪いことはできねぇな……」
 シンは、先程まで憎しみを向けていた相手が死神の餌食となる様子を見てついに、カースト達に哀れみを持った。
「……仕方がありませんよ、因果応報は本当にあるのです。応報に手を下す事は私にもできませんから……」
 イリスの言葉を最後に、その場にしばらくの間沈黙が流れた。すると突然、辺りが激しく揺れ始めた。
「な、なんじゃ! この揺れは!?」
 スクレータは揺れに狼狽した。それにつられて全員冷静を失った。
「危ない! スクレータ、無理に動くな! みんなも身を低くして頭を守るんだ!」
 ロビンが叫ぶと、皆動くのもままならぬ様子ながら、指示に従った。
 揺れはしばらく続いた。辺りの氷柱は耐えきれず、ひび割れ、ガラスのような音を立てて割れていった。
 ロビン達はしばらく、落下物に注意しながら揺れをしのいでいると、やがて揺れは収まった。
「収まった、のか?」
「いやー、びっくりしましたね。こんな所で地震に遭うなんて……」
 ピカードは頭を上げながら、安堵のため息を付いた。しかし、異変はこれに止まらなかった。
「なんでしょう、さっきまでは寒くて仕方がなかったのに、今は心なしか温かい……」
 イワンが呟くと、更なる異変が皆に降りかかった。
「きゃああああ!」
 皆の間に金切り声が響いた。
「ジャスミン!?」
 ジャスミンはエナジーの光に身を包みながら、炎を溢れだしていた。
「ジャスミン、どうし……!?」
 ガルシアはジャスミンに近づいた瞬間、炎に襲われた。
「がああああ!」
 またしても悲鳴が響いた。
「ジェラルドまで!?」
 大丈夫か、と駆け寄るロビンに、ジェラルドは言い放った。
「近づくな……!」
 ぐうう、とジェラルドは真っ赤になった手を抑えながら呻いた。
「オレなら平気だ……。何でか知らねえが、急にオレの中の炎が強まったんだ……!」
 ジェラルドの持つ火のエナジーが突然、暴走を始めたため、ジェラルドはエナジーが爆発しないように抑えつけていた。
 幸い、溢れ出んばかりのエナジーは右腕一本、軽傷を負う程度で抑えが効いた。
 彼よりもひどい状態なのはジャスミンの方だった。右腕だけで済んだジェラルドと違い、彼女は全身を溢れ出る炎につつまれている。
「このままでは危険です! 早くジャスミンを止めないと自分の体まで焼き尽くしてしまいます!」
 イリスは叫んだ。
「何だって……っう! あいててて……、どうにか止める方法はないのか!?」
 ジェラルドはまだ痛む腕をさすりながら、イリスに訊ねた。
「方法はあります。ジャスミンの意識を一時的に飛ばす事、ですが、あのような状態ではエナジーで眠らせようにも、ジャスミンの炎に弾かれるかもしれません……」
 自身の火のエナジーに、喘ぐジャスミンには近付くことすらままならなかった。
「ここは僕が……!」
 ピカードが一歩前に出た。
「僕の水のエナジーなら、いくら強い炎でも消しされるはず!」
 ピカードは仲間の注意の声を後ろに、意を決してエナジーを発動した。
『アクア・スプラッシュ!』
 数多の水の弾丸が、苦しむジャスミンへ撃ち出された。しかし、それはジャスミンの炎にぶつかると、一瞬にして蒸発してしまった。
「そんなバカな! この勢いの水を、いとも簡単に!?」
 岩をも砕く勢いのある水の弾丸を打ち消され、ピカードは目の前で起こった事が信じられなかった。
「水で消えないなら、風よ!」
 次はシバが躍り出た。そして、ジャスミンへ手を向け、詠唱した。
『テンペスト・スピン!』
 ジャスミンの周囲を、大きな竜巻が囲んだ。竜巻は炎を揺らめかせるが、なかなか消すには至らない。
「ボクも手伝いますよ、シバ!」
 イワンもシバと同じエナジーを発動した。それでもまだ、炎の方が優勢である。
『烈風の術!』
 シンも混ざり、あらゆるものを切り裂く風を吹き起こした。
「これで……、どうだ……!」