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【カイリン】愚か者め、嘆くが良いわ

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リンは、スラッグが手慣れた様子で荷物をまとめる様を、ぼんやりと眺める。

「楽しみだねえ。リンは、都市に入ったことある?」
「・・・・・・ない」
「空がね、ドーム状になってて、人工的に天気を作り出してるの。ちゃんと雨や雪も降ったりするんだよ」

上機嫌に話すスラッグに、リンは躊躇いがちに口を開いた。

「他の都市じゃ駄目なの? ほら、北西の都市のほうが近いし」
「私のお墓参りは?」
「あ、そっか・・・・・・」

リンは首を傾げて、スラッグを見る。

「スラッグは、南の都市の出身なんだ」
「そう。十二歳までいたの。懐かしいな、何年振りだろう」
「意外と、育ちがいいんだ」
「ふふ、そうは見えない?」
「だって、『スラッグ』なんて」

言い掛けて、リンは気がついた。都市に住めるほど裕福な家の生まれなのに、スラッグは、自分の本名を「知らない」と言った。呼ばれたこともない、と。
そこに、どんな事情があるのか。
スラッグは、いつものように微笑みながら、

「リンは、マスターに会いたくないの?」
「えっ・・・・・・あ、も、もうマスターじゃない、から」
「どうして? あの人がリンを捨てたから?」
「・・・・・・・・・・・・」
「そうだね、気持ち分かるよ。自分を捨てた相手だもんねえ。口では「大切な家族」とか言いながら、飽きたら簡単に捨てるんだもの。今は都市に住む余裕があるのに、リンを迎えにこようともしないし。そんな薄情な人、忘れたほうがいいよ。うん、もし見かけたら、私から文句言ってあげ」
「マスターのこと悪く言うな!!」

リンは興奮のあまり立ち上がり、声を張り上げる。

「何にも知らないくせに!! マスターは悪くない!! 全部あいつらのせいだ!! あいつらが、あたしとレンのどっちかを選べって、マスターに言ったから!!」
「そうだね。リンにとっては、大事な家族だものね」

スラッグの穏やかな言葉に、リンは口ごもって視線を逸らした。

「・・・・・・もう、家族じゃない」

あたしは、もう戻れない。マスターのところにも。レンのところにも。

「あたしのこと、改造してよ。カイトみたいに。そしたら、狩りについていけるだろ?」
「えー、駄目」
「何でだよ!! マスターのこと話したら、武器の使い方教えてくれるって言ったじゃん!!」
「武器の扱い方なら、ね。でも、改造するのは駄目。カイトが怒る」
「カイトがカイトがって!! あいつ関係ないだろ!!」
「関係あるんだな、それが」

スラッグは微笑みながら、リンに座るよう促す。

「全部教えてあげる。カイトと私と、リンの関係を」