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【カイリン】愚か者め、嘆くが良いわ

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三年後ー

「おらー! 起きろなめくじ野郎!!」

テントに踏み込まれ、毛布を剥がされた痩せ型の青年は、もぞもぞと体を起こす。

「酷いなあ、私にはスラッグという呼び名が」
「黙れなめくじ」

スラッグ(なめくじ)は肩を竦めると、乱れた長髪を手で掴んだ。

「シャンプー変えてみたんだけど、どう?」
「カイトの姿が見えない」
「大丈夫、彼はあなたの心の中に」
「また勝手に狩りに行って! あんな馬鹿知らん!!」

荒々しく出ていくリンの後ろ姿に、スラッグはもう一度肩を竦めた。


三年前、夜行性モンスターを狩りに行ったカイトが持ち帰ったのは、モンスターの毛皮ではなく、少女型アンドロイドのリンだった。
「拾った」とだけ言う相棒と、憔悴しきった少女を見て、スラッグはすぐさま「点検」することにした。

カイトも、元は家庭用アンドロイドだったのを、スラッグが改造して旅のお供に連れている。そんなことをつらつら話しながら、スラッグはリンに、すぐお家に帰してあげるからねと言った。だが、リンが激しい拒否反応を示したあげく過負荷で強制終了してしまった為、そのまま手元に置くことにした。
カイトから散々文句を言われたが、「拾ってきたのはあなたでしょう」と黙らせ、「ハンターにはしない」という条件で連れていくこととなった。

当のリンは、旅暮らしに慣れるにつれ、自分も狩りに同行したいと言い出し、カイトと揉めている。高みの見物を決め込んでいたスラッグだが、最近になって二人の矛先が彼へと向けられるようになってきた。

カイトが自分で説明すればいいのに。

それが無茶な要求であることを知っているから、スラッグは諦めて二人のサンドバッグになっていた。