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【カイリン】愚か者め、嘆くが良いわ

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リンは苛々と舌打ちしながら、小枝を集めて火を起こす。
勝手に出掛けたカイトにも腹が立つし、スラッグに八つ当たりする自分にも嫌気が差した。

スラッグは、マスターじゃないんだから・・・・・・

かつての主人を思い出し、リンは頭を振ってその記憶を押しやる。何を言っても何をしても、スラッグはニコニコ笑って受け入れてくれるから、つい甘えてしまう。けれど、その優しさが本当に自分へ向けられたものなのか、リンは自信がなかった。

また「選ばれる」かもしれない。あの時のように。

リンは、小枝で乱暴に焚き火を突き回す。何かをしていないと怖かった。自分だけが役立たずで、あっさり捨てられてしまうのではないかと。
携帯食を温め、お湯を沸かしていると、スラッグがテントから出てきて、リンの横に座った。

「今朝は何ですか?」
「ゲロよりはマシなもの」
「あははは、豪華だね」

笑いながらパサパサの乾パンらしきものを頬張るスラッグに、お茶を淹れる。スラッグはカップを受け取りながら、

「ビスケットをお食べ、と女王は言った」
「あ?」
「リンは、赤の女王より気が利くってこと」

リンが何の話だと問いかける前に、エンジン音が響いた。

「白の騎士の登場だ」

スラッグがお茶をすすりながら笑う。砂煙と共に黒塗りのバイクが現れた。色褪せた髪と赤い瞳の青年が、二人を見下ろす。

「まだ食べてんの?」

カイトの呆れた声に、スラッグは「今起きたとこ」と返した。リンはバイクを降りるカイトの前に立ちふさがると、

「黙って狩りに行ってんな!」
「今日の収穫は、スローウォーカー」
「あら、お金持ちじゃないですか」

スラッグがケラケラと笑う。巨大な亀の姿をしたモンスターは、桁違いに高く売れるのだ。

「あたしも連れてけって言っただろ!」
「スラッグ、点検して」
「ガス欠、弾切れ、損傷。どーれだ?」

きゃんきゃんわめくリンを押さえつけながら、カイトは顔だけスラッグに向ける。

「僕が被弾すると思う?」

スラッグはカップを煽ってお茶を飲み干し、「テントへどうぞ」と言った。

「バイク見たら行くね」
「早くして」
「やだ、夜のお誘いみたい」

ケラケラ笑うスラッグを小突く真似をして、カイトはテントへ向かう。

「無視すんな!!」

リンは後を追おうとするが、スラッグに腕を捕まれた。

「リンは、私と一緒にバイクの点検。そろそろ独り立ち出来る?」
「・・・・・・出来る」
「偉い偉い。リンがいてくれて、凄く助かるよ」

頭を撫でられて、リンの苛立ちは霧散する。自分も役に立つのだと、必要とされているのだと、そう思えた。