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【カイリン】愚か者め、嘆くが良いわ

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「普通、生身で飛び込む? バッカじゃないの?」

怒りと呆れの混じったカイトの罵倒に、スラッグは首を竦めた。

「だってぇー、カイトいなかったしぃー」
「気持ち悪い喋り方しない。リン、ここ押さえてて」

リンは手を伸ばして、ガーゼを押さえる。スラッグの体はあちこち傷だらけで血が滲み、内出血の痕が散見していた。明日にはもっと酷い姿になっているだろう。

あたしのせいだ・・・・・・
モンスターに襲われたら、逃げることしか出来ないのに。一人で勝手に出歩いたりしたから・・・・・・

「・・・・・・ごめんなさい」

俯くリン。スラッグが笑いながら、

「いいよ、気にしないで。それより、私、南の都市に行きたいんだけど」
「何で」

カイトの不機嫌な声がする。

「酷い。いくらなんでも、このままキャンプ続行は辛いですよ。賞金も入るし、通行料くらい出るでしょう?」

「都市」と呼ばれてはいるが、実際は城塞に近い。門は常に閉ざされ、法外な通行料を払わなければ、中に入ることは出来なかった。
そこには富裕層達が、人工的に作り上げた環境で、快適な暮らしを営んでいる。

「出るけどさ、何の為に?」
「墓参りしようかなーと思って」

スラッグの言葉に、カイトは何故かぎょっとした顔で固まった。
リンが、何事かと訝しんでいたら、

「それに、リンのマスターにも会いたいし」

今度は、リンのほうが固まる。立ち直ったらしいカイトが、居場所が分かったのかと聞いた。

「うん。徹夜で調べちゃった。まあ、だから起きてたんだけど」
「起きてたんなら、リンを行かせるなよ」
「え、そっち? それ、今、怒ること?」
「何で、マスターが、そんなとこ?」

元の場所にいないだろうとは覚悟していた。危険を避けて、もっと人の多い村に移り住んだかもしれないと。けれど、都市に移住できるほどの収入があるとは思えない。

「なんかねー、誰かの愛人になったみたいよ? まあ、女性一人だと、何かと物騒だしねえ」
「へえ、女性なんだ。美人?」
「画像見る? ボケボケだけど」
「ひ、人違いだから! その人、マスターじゃないから!!」

リンは立ち上がって叫んだ。
マスターのはずがない。マスターは、そんなことしない。
そういった誘惑が多かったことは、リンも知っている。けれど、どれだけ生活が苦しくても、誰かに頼ることをしなかったのだから。それなのに。

「でもね、レンのこと、守らなきゃいけないでしょう?」

スラッグの言葉が、リンに三年前を思い起こさせた。あの時、マスターはレンを守ったのだ。

「やりすぎだよ。リン、おいで」

カイトに腕を取られ、リンはのろのろとテントの外に出る。