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金色の双璧 【単発モノ その2】

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3.
 かくしてその翌日。シャカの目論見(?)は決行された。
 不思議なものであまりにも順調に少女の居場所がわかり、いざ当人を目の前にすると、アイオリアは急に臆病風に吹かれそうになる。
 かの少女は村から少し離れた場所にある小さな果樹園で、わずかばかりにつけた実をもぐという作業を行っていたのだった。時折、手を止めてもぎたての果実の香りを楽しむ姿は本当にかわいい……とアイオリアはだらしなく鼻を伸ばすが、一向に声をかけることはできないままだった。
「さぁ、アイオリア、行きたまえ!目当ての女子がすぐそこにいる」
「あ、いや、ちょっと待てって……心の準備が……」
「敵に待てなどという言葉は通じぬぞ?聖闘士たるもの機を逃すようなことはあってはならぬ!」
「だ~か~ら~!敵でもないし、聖闘士云々関係ないだろうがっ!」
 ちょうどいい物置き小屋があってその裏に身を隠していたのだが、シャカはぐいぐい押し出そうとする。どこにそんな力をため込んでんだ?と訝しげに思いながら、シャカの押しの一手を交わして、くるりとひるがえる。するとシャカはそのままトトッと前につんのめり、見事にばったりと地に伏したのだった。
「やべっ……!」
 焦ったところで後の祭り。曼荼羅模様を発生させながら、むっくりと起き上がりかけたその時、爽やかに吹く風のように軽やかな声がかけられた。遠目で様子を見ていたのだろう少女が駆け寄り、シャカが起き上がるのを手伝おうとしたのだ。見つからないようにと、慌ててアイオリアは物陰に隠れる。
「あの……大丈夫?」
「………」
 ちらりとシャカがアイオリアに顔を向けた。何とも恨めし気な表情を浮かべているが、それは普段見慣れているアイオリアだからわかる表情でしかない。『見つかるから、こっち向くな』と必死にアイオリアがゼスチャーすると、口元を僅かに引き攣らせながらもシャカは少女の方へと向き直ってくれた。
「立てる?どこか怪我してない?……よかった大丈夫みたいね。あなた……もしかして目が見えないの?あまり見かけない人……もしかしてロマの子?迷子になっちゃった?仲間とはぐれちゃったの?」
 矢継ぎ早に繰り出される言葉に対して、呆れて閉口しているのがシャカの仏頂面を拝めばよくわかった。アイオリアにすれば吹き出しそうな内容ばかりで、必死になって笑いをこらえるばかりである。
 黙ったままのシャカを勝手に耳も聞こえないと解釈したらしい彼女は「困ったな……どうしよう」と独りごちたあと、意を決したようにシャカの手を取り、そして体を支えるようにしてずんずんと歩き始めた。
「え!?どこに行くんだ?」
 いまだ物陰から出てこれずにいるアイオリアを他所に闊歩していく二人。気付けば遠く小さな黒い影となっていた。それでもまだ意を決せないでいたアイオリアだったが、いよいよ姿が消えかけた頃になってようやく、物陰から飛び出したのだった。