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金色の双璧 【単発モノ その2】

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3.
「なぜこんな時間に、こんなところで、話をしなければならないのかね、ミロ。話なら天蝎宮でもよかったのではないかね」
 頃合いは深夜に近い時間。空には真円に近い月が闇の頂きに位置していた。時間も時間だから人の気配はまったくといっていいほど乏しい、ゴルゴーンの丘近くの森の中を歩いていた。
「いいから、いいから」
「それにこんな恰好などさせて」
 訓練服で十分だろうに女物のように見える(いや、女物にしか見えない)長衣にわざわざ着せ替えさせられたのがシャカには不満であった。
「それなりに気分を盛り上げないとな。色々事情があるわけだ。さて、そろそろ準備にかかろうと思うんだけど。さっきの約束、ちゃんと守れよ、シャカ」
「アイオリアには言わないこと、かね。それから……驚かない、口を挟まない、手を出さない、小宇宙爆発させない、かね?」
「そうそう。うまく小芝居続けてくれ。とりあえず、あそこに座って」
 ミロが指さした方向には丘の上に一つだけぽつんと生えた木があった。
「わかった」
 促されるままにシャカは気の根元まで来ると腰を下ろした。すぐ横にミロも腰を下ろした。
「ここ、結構お気に入りでね。丘が見渡せるだろ?昼は昼で景色がいいし、夜は夜で星空パラダイスだから好きなんだ」
「なるほど。そして、ここで気に入りの者を口説くのかね?」
「え?はは、まぁ、その……そんなところだ。じゃ、そろそろ予定時間だから始めるとするけど。それじゃあ、あとはうまくやってくれよ、シャカ」
 ぐっと顔を寄せたミロ。あと僅かで唇が危うく触れそうなほどの距離まで迫った。
「はい?」
 まったくの無防備だったことは恥ずべきことだろうが、一瞬の隙だった。シャカは落雷でもあったのかと錯覚するほど、全身に電撃のような痛みを感じた。そして、そのまま身動きが取れずに横倒しになる。
「ふふ……いいね、シャカ。その顔、あいつにも見せてやりたいな」
 息をするのもやっとの有様で、そんなシャカをミロは見下ろすように跨ると陽気な鼻歌混じりで、鋭い爪先で衣を引き裂き、時には皮膚にさえ傷を作ってみせた。
 そして予め隠しておいたのだろうロープを取り出し、シャカの腕や体にぐるぐると巻きつけた。
「無抵抗なのをいたぶるのって、趣味じゃなかったけど、少しゾクゾクするな。やみつきになるかも」
「……!」
 何をふざけたことを言うのかと文句の一つも言いたいが、シャカは言葉にすることができなかった。
「さてと、これぐらいでいいか。後は……仕上げにコレっと」
「……んんっ!?」
 最後の調味料でも付け加えるようにミロは小さな小瓶を取り出し、シャカの口元へとそれを流し込んだ。
「大丈夫、そんなに無茶なものじゃないと思う……たぶん。おっと、やばい。急がないと見つかるな」
 にんまりと笑みを零したミロはシャカを抱え上げるようにしたあとロープを比較的太い木の枝に引っかけ、シャカを吊るした。
「ん。これぞまさにテルテル坊主……なぁ~んてね。しかし、我ながら外道だなぁ。じゃあ、あとは頑張ってアイオリアの道を踏み外してやってくれ、頼んだぞ、シャカ」
 妙な感心と意味不明の言葉を告げたあと、ミロはそそくさとその場から退散した。
 ミロ、許すまじ!と凄まじい殺気をシャカは放ったが、それも僅かにしかもたず、あとは無駄に上昇し続ける体温のおかげでクラクラと眩暈の餌食となっていた。
 そんな状態になってようやくシャカは川で思い出しかけていた記憶を過去から引き出した。
 そう、子供だったあの時もミロの無邪気な悪戯によって大怪我を負ったのだったということを。