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田舎のおこめ
田舎のおこめ
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Dear

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「いや、それがさぁ。後ろからフラフラしてる車が近づいてくるなーって思ってたらそいつ居眠り運転だったらしくてさ。思いっきり歩道歩いてた俺に突っ込んで来たんだよね。
で、なんとか避けようとしたけど避けきれなくて、骨折れちゃった。まあ、周りに誰もいなくてよかったよ。被害者は俺だけみたいだし」
自分は骨折しているのに、下手すれば死んでいたかもしれないのに笑顔でそう言った。
「もう!ほんとに・・・・!!」
そこからは、涙と一緒に流れ出た安堵の言葉だった。
「よかった・・・ほんとに・・・無事で・・・」
「ミクねぇ・・・」
その場で泣きじゃくる私に、レンは優しく言った。
「泣くなよミクねぇ。大丈夫だから」
そして、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟く。
-----ミクねぇを置いて、死んでられるわけないじゃん-----
辛うじてその声が聞こえた時、とてつもなく嬉しく恥ずかしかった。
泣くのを忘れて、小さく頷くのが精いっぱいだった。

そして泣き止んだ後すぐ、先生と母が病室に入ってきた。
母は私の涙で腫れた目を見て、なにか言いたそうだったがなにも言わない事にしたらしい。
母が電話で慌てさせてしまった事を先生に謝罪し、先生は学校に戻るからっと言って出て行った。荷物は後で家に運んで置いてくれるみたいで、お世話になりっぱなしで申し訳ない。
今日一日レンの様子を見ておくつもりだったらしい母は、その役目を私に受け継がせて職場へ戻って行った。
どうやら、私の涙は姉としての涙と判断してくれたみたいだ。
現在午前十時。
母が迎えに来ると言った時間が十六時。
八時間・・・こんな長時間レンと二人っきりでいるのはいつ振りだろうか。
そんな事を考えていたら、急に意識して緊張してしまっていた。
「あ、あのレン。な、なにか欲しい物とかない?あ、私下の売店とかで買っちぇくるよ?」
思いっきり言葉がカミカミになってしまい、ますます恥ずかしい。
すると、レンは『プッ』と噴き出し楽しそうに笑っていた。
「そんなに緊張するなよミクねぇ。二人きりだけど、ここは病院の病室だし、俺は怪我人。なにかあるわけないだろ?」
言われなくてもそんな事は分かっている。分かっているんだけど・・・
言葉に詰まり、困っていた私にレンは落ち着けとばかりに、頼み事をしてくれた。
「じゃあ、なんかお菓子と飲み物でも買ってきてよ。なんか甘い物が食べたくてさ。ミクねぇが選んでくれていいから」
笑顔で向けられた言葉に、私は子犬の如く嬉しそうに首を縦に振り
「わかった!ちょっと待っててね!」
小走りに財布を持って病室を後にした。
廊下に出てすぐ、「きょうつけてねー」っと声が聞こえたので、「わ、わかってるわよー」っと答える。
それだけで、なんだか恥ずかしいがとても嬉しかった。
レンが怪我をしてしまったのは悲しいけど、そのお蔭で今日はずっと一緒にいられる。
もしかしたら、お見舞いと言う体でいままでより沢山話できるようになるかも。
そう思うと、嬉しくてたまらなかった。
不謹慎でしかないのだが。

「・・・こんなにいらないよねー」
買い物を終え、病室の前で少し冷静になった私は両手に抱える買い物袋を見て呟いた。
中身には、炭酸ジュース・オレンジジュース・お茶・水・スナック菓子・チョコレート・プリン・ゼリー・麩菓子・駄菓子….etc
舞い上がったまま買い物をしてしまったせいか、完全に買い過ぎてしまった。
とても一日で食べきれる量ではないわけで・・・
「ま、まあプリンとかゼリーは冷蔵庫借りて入れとけばいいし、お菓子は腐らないからいつでも食べれるよね!うん、大丈夫大丈夫!」
無理やり自分に言い訳を立てて、とりあえず病室に持って入る。
「ごめんねー遅くなって!ちょっといろいろ・・・」
病室に入ってレンに向けたはずの声をすぐに小さく絞る事になった。
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
レンはとても気持ちよさそうにベットに横になっている。
スヤスヤと寝息を立てて、私が話しかけた声でもまったく起きる素振りはない。
考えてみれば、レンがこれだけゆっくりしているのを私は初めて見たかもしれない。
空手で全国上位の実力者であるという事は、それだけの時間鍛錬を積み重ねているという事。
ほぼ毎日学校の部活はもちろん、少しの時間でも道場に顔を出して練習している。
その上、勉強の方も優秀ときている。
テストの点数も毎回クラスで上位5人には入っているし、普通に勉強だけで国立大学進学も余裕だと先生から言われているらしい。
いつも、なにかに一生懸命な姿しか思い浮かばない。
当然、睡眠時間は少な目になっていただろうしその上、週に何回かは私と深夜までおしゃべりしてくれているわけで・・・
もしかしたら、この入院はレンの体にはよかったのかな?
レンは空手の練習出来なくてつまらないかもしれないけど、日頃溜まっている疲れを一気に癒せるかも?
そう思うと、少しだけ、ほんの少しだけ入院している事がいい事に思える。
まあ、怪我していてすごく不便なのは事実だけど・・・
そのまま私はレンの傍にいた。
テレビこそ付いていたが、特にそちらに目が行くわけでもなく、すぅすぅと気持ちよさそうに眠るレンの顔を眺めて数時間を過ごした。

その後、お昼時に目を覚ましたレンと、母が戻ってくるまで二人で他愛のない会話で過ごした。
母の仕事が終わり、病室に来るなりレンの顔を見て『うん、元気そうだからこれなら大丈夫だな!まあ、着替えとかはミクの学校が近いから、ミクにお願いして!』っと言ったので、そのままレンの世話役は私に決定。
『えー?もうめんどくさいなぁ。』っとか言いながらニヤけそうになる顔を抑えるのに必死だったり。
それから母と家に帰り、父・ルカ・リンも帰宅。(私以外のところには父から連絡したらしく、大事じゃないというのは伝わっていたらしい)
晩御飯を食べ、お風呂に入り、自分の部屋に行き寝る準備をする。
布団に入り電気を消して睡魔の誘いに乗りかけたところで、なぜだか部屋がノックされた気がした。
あれ、レンって今日来るんだったっけ?
寝ぼけながらに考えたが、そもそもレンは今病院だったのを思い出す。
眠気が少し遠ざかったのでドアを開けて確認するが、誰もいない。
----やっぱり気のせいか----
----ノックされるの、楽しみにしすぎかなぁ----
もやもやそんな事を考えてたいら恥ずかしくなってしまった。
とりあえずお手洗いに行き、また寝ようかと思った時、なぜだかレンの部屋のドアが目に付いた。
そこには今、誰もいない。
なのに、なぜだか気になる。
そのまま無意識にレンの部屋のドアの前まで足が動く。
主人がいない部屋に勝手に入るのは気が引けるが、身内だしいいかなっと言い訳をし、ドアノブをひねる。
中に入り、後ろ手でそっとドアを閉めて改めて中を確認したが、やはり誰もいない。
暗闇に目が慣れてきて、ざっと部屋を見渡す。
綺麗に整理された机の上。
少し大きめの本棚の上にはいくつかのトロフィーが飾ってある。
その横にはハンガーが二個・・・いつもは空手の胴着と学校の制服が掛けてあったはず。
そして、部屋の隅にはダンベルがいくつか置いてある。
作品名:Dear 作家名:田舎のおこめ