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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 17

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 ロビンは以前、二人が言うような能力で、ヒナから自らに宿る力を見通されていた。百戦錬磨の勘、と聞かされていたが、まさかそのような特殊な力であるとは思わなかったのだ。
「ですが、ヒナに比べればまだまだ読みの正確さに欠けますね。彼女はリョウカに宿る私の存在までも看破していましたからね……」
「姉貴がお前を……。姉貴のやつ、そこまで極めていながら、力通眼を勘だなんて言いやがって!」
「なあ、その。りょく、つう、がん? ……てのは何なんだ?」
 すっかり話から置いてけぼりにされた仲間を代表するかのように、ジェラルドは訊ねた。
「簡単に言えば、相手の強さ、力が読めるものだ。ジャスミンの大きな炎の正体が『プロミネンス』だって分かるような感じのな」
 説明を受けても、ジェラルドは古代の言葉で話されているかのように、理解できていない様子だった。
 それよりも、とシンは再びジャスミンに視線を向ける。
「今のお前じゃ精々、あの炎を出すか消すかが限界だ。細かい調節はできっこねえ。一つ間違えれば、近くにいる人や物を消し炭にしちまう。気軽に使えるものじゃないって事だけは覚えておけ」
 いつになく真面目な眼差しを向けられ、ジャスミンは『プロミネンス』の全力がどれほど危険なものか理解した。
「ええ、気を付けるわ……」
 シンの言う適応が進んだのか、ジャスミンはずっと体の奥が熱く感じていたが、今になってそれが収まった。それでも感じる大きな力が、決して溢れぬようジャスミンは肝に銘じるのだった。
 不意に、周囲を騒音が包んだ。それは外から響いたものであり、バコン、と地面と何かが衝突する音だった。
「何だ、今の音は!?」
「外からだ、行ってみよう!」
 ロビンとガルシアを先頭に、一同は灯台の外へ出た。
 これまで、衝撃的な出来事が相次いだため気付かなかったが、あの猛吹雪は止んでいた。白い空に青空が覗いている。
 音の正体はすぐに特定できた。
「リフトが下りてきたんだ」
 灯台の解放により動き出すリフトが稼働を始め、登りのリフトが、一定の周期で頂上から下りてきたようである。
「リフトが動き出したという事は、灯台が灯ったようじゃな。しかし、そうすると、一体誰が灯したのじゃろうか?」
 スクレータはロビンと同じ疑問を抱いていた。
「きっと行けば分かる。みんな、行こう」
「お待ちください」
 行って確かめようと言うロビンを、イリスが引き止めた。
「イリス、どうしたのじゃ?」
 スクレータが訊ねると、イリスは灯台の頂上から感じる、謎の気配の存在を告げる。
「なるべく気配を抑えているのでしょうか。何者かまでは特定できないのですが、この上から禍々しい力を感じるのです……!」
 その禍々しい何かは、天界で最強の女神に冷や汗をかかせるほどの力を持っていた。
「まさか、錬金術を狙うものか!?」
 ガルシアは四つの灯台が灯り、復活するであろう錬金術を、漁夫の利的に奪おうとする存在を思い浮かべた。
 しかし、イリスは首を横に振るばかりである。
「分かりません。ただ禍々しい気配しか伝わってこないのです……」
「もしガルシアの言うように、錬金術を狙う奴なら止めなければ。みんな、気を付けていこう」
 イリスを除く全員が、頷いた。
 次々とリフトに乗り込む仲間達。イリスは感じる禍々しい気配に、覚えがあるような、ないような。微力な記憶に不安を感じながら、ついにその足をリフトへ運んだ。
    ※※※
 アネモス神殿最奥に、祭壇が立てられていた。大悪魔デュラハンを暗黒の世界より、現世へ呼び覚ます儀式が開かれている。
 スターマジシャン、シレーネは、来る四属性の灯台解放による、エレメンタル上昇を待ち、祭壇の前で瞑想していた。
 祭壇はかなり禍々しい作りをしている。半円型の台の両端には、小猿のような姿の悪魔像が置かれており、中央には漆黒の鏡。鏡の上には悪魔の化身とされる、巨大な角を持つ魔獣を象ったレリーフが取り付けられている。
 シレーネは瞑想を解いた。空間に水泡が現れ、人型を成していくと、息を絶え絶えにしたアレクスが現れたからだ。尤も、シレーネには気配で分かっていたが。
「先……生……」
「どうしたのアレクス、そんなに具合悪そうにして」
「いえ……、少し無理なワープをしてしまったので……」
 アレクスは少し咳込むと、それよりも、と問い返す。
「デュラハン様再臨の儀式はどうなりましたか……?」
「準備ならできたわよ。後は世界のエレメンタルパワー上昇を待つだけ」
 シレーネは予見の魔術を発動した。その先はアレクス達を向かわせた、マーズ灯台の頂上である。
 彼女は事前に、マーズ灯台の頂上に待ちかまえる異形の存在を予知していた。アレクスらならば問題なく楽に倒せるであろう、シレーネは思っていたが、彼が逃げ出してきたのではないかと疑ったが故に、彼女は魔法を使用した。
 魔術により、シレーネの目に映ったものは、予見していた異形の存在が、センチネルによって倒され、バルログによってマーズ灯台が灯された場景であった。
 シレーネは術を解く。
「どうやら、あんた達のおかげで一つ目の目的は達成できたようね。後はすぐに、十分なエレメンタルパワーが世界に満たされるわ。そうすれば我が麗しの……」
 心身ともに捧げているデュラハンの再臨を目前とし、シレーネは陶酔した。
 その後間もなく、世界は強いエレメンタルに包まれた。エナジストやシレーネのような異能力者には、その変化が手に取るように分かった。
「いよいよですね……」
 アレクスはようやく、無理なワープによる体への反動から、回復し始めていた。
「そうね……」
 シレーネはそれだけ言うと、祭壇まで歩み寄った。そして祭壇の中心に置かれた漆黒の鏡を取る。
「今一番強いエレメンタルパワーを放っているのは、マーズ灯台よ。あたしも行くわ。あんたは……、まだ具合が悪そうね。あんたはここで悪魔様の再臨を見ていなさい」
 アレクスにとっては好都合だった。今、マーズ灯台にはあの女神がいる。だとすれば、必ずロビン達も一緒にいるに違いなかった。彼らと邂逅する事だけは避けたかったのだ。
「そうさせていただきますよ、デュラハン様の再臨を直に見られないのは残念ですが……」
 アレクスは建前として言う。
「すぐにあんたも会えるわよ。それじゃ、あたしは行くわ。留守番よろしくね」
 シレーネは光に身を包むと、一瞬にして姿を消した。
ーーさて、デュラハンとやらの力、ゆっくり見させてもらうとしましょうか……ーー
 アレクスは一人、不敵な笑みを浮かべると、魔術を使い、遠方を見通す目をマーズ灯台へ向けた。
    ※※※
 灯火により稼働を始める、エレメンタルの灯台のリフトが、等速で頂上まで到達した。リフトが停止したのを確認すると、ロビン達はリフトを降り、火口付近に近付いた。
「あれは!?」
 ロビンは驚きのあまり声を上げてしまった。灯台が灯っていることにも驚いた。しかし、それ以上の出来事が、ロビンだけでなく仲間達にも降りかかったのだ。
 赤く輝く灯火の前に、人が三人倒れていた。その人々は、ロビンやガルシア、ジャスミンにとってよく知る人物であった。
「パパ、ママ……!?」