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凛ちゃん女体化したら争奪戦になった

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プレゼント(遙凛)



屋内プールのある施設で一緒に泳いだあと、女子更衣室から出てきた凛と合流して、遙は帰り道につく。
外は日が暮れていた。風が冷たい。
「やっぱり、おまえの泳ぎは綺麗だよなぁ」
凛はそう言って笑った。
オーストラリアに留学して挫折を味わった凛は小学生のころとは雰囲気ががらりと変わって笑わなくなっていたが、地方大会を終えて、吹っ切れたようになった。
生まれつきのように自然に綺麗に速く泳げる遙に対して、屈折した思いがあったのだろう、帰国後に再会してから地方大会まで突っかかってくることもあったが、今は綺麗に泳ぐ遙を純粋に称賛している。
とはいえ、以前のような明るさを完全に取りもどしてはいなくて、笑うことは少ないのだが。
遙はカバンから紙の小袋を取りだした。
それを凛のほうに差しだす。
「やる」
無表情で短く言った。
凛はきょとんとした表情になる。
「なんだ?」
それでも、凛は自分のほうに差しだされた小袋を受け取った。
凛は小袋の中に入っている物を取り出す。
遙は感情のこもらない声で言う。
「作った」
色とりどりの石をつなげたブレスレットだ。
「おまえ、そういうの好きだろ」
凛はアクセサリーが好きで、よく身につけている。
そのブレスレットを凛はじっと見ている。
「これ、おまえが作ったのか?」
「ああ」
「すごいな」
パッと凛の顔が輝いた。
「ありがとう」
まるで小学生のころにもどったように凛は屈託なく笑った。
その笑顔を、遙は無表情のまま、しかし、いつもよりも強い瞳で、眺めていた。

鮫柄学園は共学の私立高校で、全寮制である。
凛は寮内の廊下を歩いていた。
「凛先輩」
鮫柄学園女子水泳部の後輩から話しかけられた。
「そのブレスレット、綺麗ですね!」
「だろ?」
凛はちょっと得意気な顔になった。

「なあ、ハル」
また二人で屋内プールに泳ぎに行ったあと、施設を出るまえに、凛が妙にかしこまった様子で立ち止まった。
「これと同じ、ってか、似た感じの、作ってくれねぇか?」
凛は自分の手首にあるブレスレットを指さす。
「うちの後輩がうらやましがって、ほしがってんだ」
そして、凛は両の手のひらを顔のまえで合わせる。
「頼む!」
遙に向かって、拝んだ。
凛は勝手気ままのように見えて、妹がいることもあり、案外、面倒見がいい。テストまえには後輩に勉強を教えたりもしているらしい。
「……わかった」
遙はいつもの無表情、冷静な声で、引き受けた。
すると、凛の顔が明るくなった。
「良かった!」
嬉しそうな笑顔を遙に向ける。
そのあと、ふたたび歩き始めた。
「あ、そうだ、材料費は払うからな」
「いらない」
「そういうわけにはいかねぇだろ」
「作るの、結構楽しいんだ」
「ああ、そういや、おまえ、船の模型とか作ったりしてるんだよな」
遙はうなずく。
手先が器用で、物を作るのが好きだ。
凛に言ったとおり、ブレスレットを作るのも結構楽しかった。
でも、作った理由はそれだけではなかった。今回、凛の後輩のために作るのを引き受けた理由もそれだけではなかった。
欲しいものがあった。
そして、その欲しいものを得ることができた。
遙は凛の笑顔を眺めて、かすかに笑った。

これが、アクセサリーデザイナー七瀬遙の誕生のきっかけだった。