凛誕!
息が止まった。
「……プレゼント、もらいっ!」
至近距離にいた凛は顔を背けて大声で言うと、離れていった。
顔は見えない。
けれども、その髪からのぞく耳は、赤い。
ひとり残された遙は壁に背中を預けたままでいた。動けない。真琴がすでに来て待っているかもしれない休憩室に行く気にならない。今、行けば、ひどく動揺していることに気づかれてしまうだろうから。
アイツ……!
遙はさっきの凛の去っていくうしろ姿を思い浮かべた。
くやしいような、恥ずかしいような、落ち着かない気分だ。冷静ではいられなくて、自分らしくなくて、イヤだ。
なんでこんなに心臓が鳴っている。なんでこんなに顔が熱い。
誕生日プレゼントとして持って行かれてしまった。
ファーストキス、を。