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愛すべき策謀家どの

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仕事が終わって、ちょっと呑みにいくかとシュラは鼻歌まじりに軽い足取りで道を歩いていた。
陽は落ちている。空は暗い蒼。まだ黒くはない。
けれども、少しまえまではまだ明るかった時刻だ。夏が終わろうとしているのを感じる。
胸元で携帯電話が鳴った。
多くの男性の眼がつい惹きつけられてしまいそうな巨乳のあいだから携帯電話を取り出して、だれがかけてきたのかを確認する。
画面に表示されているのは、シュラと同じ祓魔師の女友達の名だ。
「はーい」
明るい声でシュラは電話に出た。
『シュラ』
電話の向こうから聞こえてきたのは、画面に表示されていたとおりの女友達の声だ。
その声に緊迫した感じがなくて、シュラは安心した。
『急な話なんだけど、あさっての夜、時間取れる?』
「え、別にいいけど、なんでだ?」
『合コンすることになったの。行かない?』
合コン。
ひさしぶりに聞いたその単語に、シュラは大きな眼を、一瞬、さらに大きくした。
そして。
「行く! 行く!」
勢いよく、二度も、参加表明をした。
気分はすっかり上昇している。
合コン。それは出会いの場。素敵な出会いがあるかもしれない。それに、呑める!
世間一般の女性とは若干ズレたポイントで喜びつつ、シュラは気になったことを即行でたずねる。
「で、相手側はどーゆーメンツなんだ?」
『ああ、それはね』
女友達が合コンに参加する男性陣について説明する。
正十字騎士団の関東にある支部に所属している祓魔師たちだと。
「なんだ、同業者かよ」
ほんのちょっとシュラの気分は下がった。
『でも、私たちの場合、同業者のほうがいいでしょう?』
「……まあな」
女友達に問いかけられて、自分の過去の恋愛をふりかえり、シュラは同意した。
付き合う前後は夢の中にいるように浮かれていてお互い気にならなくても、なにかあれば呼び出される、長期で遠くに行かされる、連絡できなくなる、さらに命の危険がある仕事をしている現実が、重くのしかかってきたりもする。
『それに、同業者なら、身体きたえてるはずよ』
電話の向こうで女友達がにんまりと笑っているのが想像できる声だった。
結構長い付き合いの女友達なので、シュラの好みを知っている。
シュラの気分は下がったぶんだけ上がり、頬をゆるませた。
きたえられた身体がいい。
できれば、背が高いほうがいい。
あの安定感がたまらないのだ。
でも、マッチョすぎるのは少し苦手である。
理想的なのは、と考えて、頭にふとよぎったのは、獅郎の姿だった。
それから。
なぜか。
獅郎の養い子である双子の弟のほうの姿が頭に浮かんできた。
たしかに、シュラの好みの条件に合っている。
でも、アイツだぞ!?
シュラは頭に浮かんだ姿をかき消した。
『参加OKでいい?』
「もちろん!」
気を取り直し、シュラは声を弾ませた。
「めいっぱいオシャレしてくぞー。本気のアタシ見せてやる」
恋がしたい。彼氏がほしい。特殊で危険な仕事をしているとはいえ、そう思ってなにが悪い。
素敵な相手とめぐり合って、恋愛が始まることを期待しながら、シュラは行きつけの居酒屋まで続いている道をうきうきと進んでいった。

シュラは酒を呑んでいた。
気分は、悪い。
いや、正確には、機嫌が悪い。
「くー……」
テーブルに拳を置き、うつむいた状態で、うなるように声を出した。
そのあと、顔をあげた。
ほえる。
「アイツら、意気地なしすぎるんだよ!」
かなり呑んでいるせいで少し化粧崩れしているが、その顔はいつもよりも綺麗だ。前日の夜はめずらしく酒を呑まずに早寝して肌のコンディションを良くし、今日出かけるまえに気合を入れて化粧した成果である。
服装も華やかにして、派手すぎず。
そう、今日は女友達から誘われた合コンの日である。
シュラは合コンに参加した。
しかし、合コンは一次会のみで、二次会はなかった。
その一次会のあと、シュラは女友達とともに居酒屋に呑みに行くことにした。
そうしなければやってられない気分だった。
合コンの会場である店の席に行き、男性陣を品定めしていると感じられない程度に軽く見渡して、シュラは上機嫌になった。なかなか良さそうな感じだったからである。
男性陣の反応も良かった。なにしろシュラは美人で、しかも、もし巨乳好きならたまらない身体をしていている。
合コンが始まって、話をするようになり、会話の相手の反応はますます良くなった。
相手から仕事について聞かれたので、シュラは祓魔塾で講師をしていると答えた。別に嘘をついたわけじゃない。祓魔塾で講師をしているのは本当のこと。ただし、それは仕事の一部だということは、その時点では言わなかった。
へー、祓魔塾で先生をしてるのかー。そう言って、男たちはニコニコとなんだか嬉しそうな顔をしていた。
自分が祓魔塾にいたころを思い出して懐かしいと言う男もいた。
雲行きがあやしくなってきたのは、取得称号の話になったときである。
相手の反応が良くて、酒も少し入ってきて、シュラは上機嫌で本当のことをさらっと話した。
取得称号は、騎士、手騎士、医工騎士、詠唱騎士だと。
称号は五種類ある。その五種類ある称号のうち四つまでシュラは取得しているのだ。
それを聞いていた男たちの表情は微妙なものに変化したのだが、残念ながらシュラはそれに気づかなかった。
さらに階級を聞かれたので、素直に、上一級だと答えた。
男性陣の階級は中一級か中二級だった。
追い討ちをかけるように、男性陣のうちのひとりが、シュラが聖騎士であるアーサー率いる聖天使團の一員であることに気づいた。
微妙な表情をしていた男たちの顔がこわばった。
そう、あきらかに、彼らは、“ひいた”
さすがにもうその時点でシュラは状況を理解していた。それでも、なんとか良いほうに持っていけないかと思った。自分より取得称号が少なくなって、自分よりも階級が下だって、ぜんぜんかまわないのだ。
そんなシュラに合コン相手の男が告げた。
君には俺たちよりもっとふさわしい男がいるんじゃないかな、と。
「って、なんだよソレ!!」
シュラはふたたびほえた。
「祓魔塾の講師なら可愛くて良くて、称号四つ持ってる上一級で、あのハゲの直属の部下だと可愛げがないってのかよ!?」
「聖騎士はハゲてないと思いますが」
「いや、実際にハゲてるかどーかってことじゃなくってさあ」
言い返している途中で、シュラは、ん? と思った。
女友達と話しているはずなのに、さっきの声は男のものだったからある。しかも、聞き覚えがありすぎる声だった。
シュラは声がしたほうを見た。
そこにいたのは、あたりまえのことながら、その声の持ち主だった。
雪男が隣に座っている。
しかも、ここは居酒屋ではないのに気づいた。
自分の部屋だ。
シュラは驚きで眼を見張る。
「な、ななななな、なんでっ」
「仕事で聞きたいことがありまして、シュラさんの携帯に電話しましたら、別の女性の方が出られました」
別の女性の方とは、おそらく女友達のことだろう。
女友達が自分の代わりに電話に出る。それがどういう状況なのかうっすらと察し、シュラの背中を冷や汗が流れた。
「その方はおっしゃいました。あなたが酔いつぶれて困っている、と」
作品名:愛すべき策謀家どの 作家名:hujio