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【ジンユノ】SNOW LOVERS

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 気が付いたらジンは右手をユノハの頬に置いたまま、左手でユノハの右の手を探り、指と指を絡めてそれを握っていた。ユノハの方も同じように、絡まった指に力を込めている。彼女の左手は、ジンのカーディガンの合わせ辺りを握りしめたままだ。
 手は凍えているのだとユノハは言っていたが、冷たくは感じなかった。むしろ、繋がる部分全部に熱が生まれる気さえする。熱くて、その熱はジンの内から情動となって溢れるようだった。そのままユノハもこの熱に巻き込んで、あたためてやれるのなら、と、ジンが握った手を意識して更にぎゅっと力を込めるのを合図にしたように、

「……好き、です」

 何度目かの唇が離れる小さな狭間、吐息混じりの声でか細くユノハがそう言った。
 ひょっとしたら、と、微かに期待し、そうであれば、と、望んでいた事。言葉にされていっそう確信が持てると同時に喜びが熱くジンの身体を駆け巡った。
「……うん。僕も……」
「はい……」
 ユノハの方はとうに判っていたのだろう。それでも彼女は、安堵したように、ふにゃりと笑み崩れた。
「……やっと、言えました」
「……ユノハ……!」
 感極まって、ジンは思わずユノハを掻き抱き、一層強く強く唇を押しつけた。塞いだ瞬間、んっ、と小さな声がユノハから洩れる。声ごと、吐息ごと自分のものにしたくて、唇を食むように小さく何度も押し当てていたら、重ねたユノハの方が、故意なのか偶然なのか、呼吸に紛れてちゅっと軽く唇に吸いついてきて、そのしっとり離れ難い感覚が心地よくてジンも同じように吸ってみる。するとユノハもそれ以降同じように真似てきて、ちゅ、と極微かなリップ音と共に、キスが少し変化した。暖かくて柔らかなのは同じだけれど、繰り返すうち少し濡れたような感覚が加わる。何故かぞくぞくして、もっと、と覆いかぶさらんばかりになったところで、ユノハが苦しげに眉を寄せくたっと倒れこんできた。

「ユ、ユノハ?」
「ご、ごめんなさい。息継ぎのタイミングが上手く掴めなくて……」
「あ…うん……」

 ジンも息が上がっていた。キスって気持ちいいけど難しいものなんだな、とか思いながら、離れた事で改めて照れが出て、ユノハの肩をぎくしゃくと支えながら、大丈夫? と声をかける。改めて、雪に埋もれていた事に気付いて、慌てて、戻ろうか、とユノハを促す。ユノハも、どこかぎくしゃくしながらこくんと頷いた。
「立てる?」
「平気です。……何だか改めて雪だらけですね」
 今更のように、ユノハは腕やスカートについた雪を払う。ジンも同意しながら服についたそれを払って、そこでカーディガンの左ポケットの辺りに、服地とは異なる固い感触があるのに初めて気付いた。
「え」

 アイビジョン付きのいつもの通信端末は右ポケットだ。服地の上から触れば確かにそこに感触がある。では左はなんだ?
 反射的に左ポケットに手を突っ込んだジンは、そこに片手で掴めるほどの、細長い箱状のものを見つけた。ジン自身、そんなものを入れた覚えはない。吃驚して掴み出すと、それは綺麗にラッピングされリボンの掛けられた包みだった。派手すぎない程度に華やかに、センス良く飾られた、一見してプレゼントと判る品物だ。

「……何これ。いつの間にこんなの……いったいどこで」
 想定外の出来事に盛大に混乱するジンの横で、「あ」とユノハが小さく声をあげ視線を泳がせた。それに気付いてジンもユノハを見る。
「……え。もしかして」
「えっとあの……見つかっちゃいました、ね」
 困ったように上目遣いでジンを見て、また視線を下げる。
「ユノハなの? いつの間に……」
 雪だまりに倒れ込んだ時だろうか。それとも、キスに夢中になってた隙に?
 もしくは雪だるまを作りながら、どさくさに紛れて、だろうか。
「あの……ね、こっそり渡すつもりで……」
「……気付かなかった。これ、僕に?」
 こくん、とユノハが恥ずかしそうに頷く。
「あ、ありがとう……でもどうして? こんな綺麗なの、貰う謂われ特になかった気がするんだけど」
 単に包装されてるだけではない、リボンも何か特殊な結び方で飾られているようだった。パーティーラッピングのような丁寧で洒落た、そんなプレゼントはジンは受け取った事がない。男社会は総じてシンプルになりがちなのだ。だから余計に、ジンの目にはゴージャスに映る。
「あ……えっと、えっとね、そのぅ、あの、今日はあの、バレンタインデーだから。えっと、気付いてなかったかもしれないけど」
「え。ばれんたいん……?」
 気付くもなにも、それはジンの知らない習慣だ。
「それでね、愛の誓いの日で、こ、恋人の日……とか言われたりする、から……。あっ、ジンくんの了承も得ずにそんなの勝手に思ったんじゃないけど、でもあの、親しい人や好きな人に贈りものとか、するのが普通だから。わたし――どうしてもジンくんに、贈りたくて」
「こいびとの日……」
 秘め事がばれてしまった決まり悪さで赤くなり、もじもじと歯切れ悪く打ち明けるユノハの言葉を理解するにつれ、ジンの方もまた気恥かしい嬉しさが湧きあがって、思わずプレゼントを持つのと逆の手で、ユノハの手を掴む。
「あ、あのっ、ありがとう……! それであの、こ、恋人……って、僕達もう恋人同士……だよね?」
「え」
「あ、いや、その、好き……同士なんだから恋人って、言ったら駄目かな」
「だっ、駄目じゃないです……っ!」
 一拍置いて、ユノハがぶんぶんと首を横に振る。
「駄目じゃないよ……嬉しい……」
 声が震えて聞こえて、見るとはにかんだ笑顔は何故か涙を浮かべていてジンを焦らせた。
「ユ、ユノハ? え。泣いて……? ぼ、僕何か悪い事言った?」
「違うの。これは嬉し泣き、です」
 ユノハはそう言って、ジンが掴んだのと逆の手の指で涙を拭いながら微笑んで、そうして掴んだ方の手はもう一度ジンの手に繋ぎ直された。指を絡めて。

作品名:【ジンユノ】SNOW LOVERS 作家名:SORA