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【ジンユノ】SNOW LOVERS

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 慌てたのはユノハの方だった。
「えと、あの、つまり……そう、です。ハート。あの、ふ、深い意味はなくてですね。並べてるのでっ、二匹はお友達で、仲良しだといいなっていうか、きっとそうだと思うから。だから大好きで、えっと、その気持ちというか、心というか……」
 早口気味にそう言い募って、押し黙る。

 ハート型は心臓の象徴。ジンはぼんやりと知識の引き出しから意味を探る。彼にはあまり、そういうものに触れる習慣がなかったから、特別な感慨が薄いのだ。宗教画とか、そのようなものでしか見た覚えがない。だから、ユノハの焦ったような口ぶりが、何に起因するものなのか、ジンはよく判らない。
 けれど、「大好きなんですよ」、その言葉が、まるでユノハから自分へと告げられてでもいるように、ジンには聞こえた。それは自分がそうあってほしいと思うから、そんな風に聞こえるんだろうと思い直し、理性で修正をかけるけれど、それでも体温が上昇するような嬉しさは消せない。
 ユノハの慌て具合も、なんだかそれを後押ししているように感じ、ジンは一人で照れそうになって、慌てて口元を抑え、また視線を外した。さっきから、ちらちらとまた垣間見えるようになった雪が鼻先にひとひら引っかかる。それはあっという間に水滴に変わり、ジンはそれを擦るふりをして自分の熱をごまかした。

 くすぐったい居心地の悪さが、ほんのりと二人の間を過る。何か言おう、と、ジンは目についたハート型について重ねて訊いてみた。
「それ、さっきも描いてた、よね。雪玉転がしてた時。一文字で、意味のある記号だからって」

 ユノハの指示で。直線から始まって途中で大きく弧を描いたと思ったら一旦止められて。方向を変えてまたそこから、インボリュート曲線を途中から直線に変更したような、変形曲線。出来上がったほぼ線対称な形には覚えがあって、記号なのだとはわかったけれど、ユノハはそこからまた方向を変えて、雪の上に出来上がった文字を上書きしないよう、あさっての方へ雪玉を転がしていくので訊きそびれたのだ、その時は。

「あっ……そ、そう、です。えっとあの、ホラ、良く使うじゃないですか。幸せとか、楽しいとか、好きなものや喜びを表現する形容に。ほら、カードやメールの文面の最後に書き込んだりとか」
「……そうなの?」
「そう……じゃないですか? ジンくんは使いません?」

 実は男社会で育ったジンの周りで、そのようなハート型の乱用は、あまり見られなかった。ああいう文字装飾は、元々女性が好むもので、男性はそれを知るからこそ女性の気を引くために使うのだ。
 ただ、文化としてハートの象徴が残っていなかったわけでもない。身近ではなかっただけだ。
 だからジンも、おぼろにそれを理解する。楽しい時、気分が高揚する時。心臓の象徴が、鼓動の高鳴りを意味するのだなと、感覚的に納得する。

「男の子はあんまり使わないかな? でも日常的によく見るサインだし、か、形とか可愛いので、だからいいかなって、あの……」
 やっぱり少しいつもより落ち着きのない口調で、ユノハはジンを振り仰いで言葉を重ね、そして尻すぼみにそれは掻き消えた。俯きがちにもじもじと、口元から胸の上あたりで両手の指が組んだり解いたり、心もとなさげに動く。いつも抱えているタマがいないから、隠れることもできず落ち着かないように伺えた。夜だから、白々した灯火の下とはいえ色は彩度を落とし、俯いてるせいもあってはっきりと判らないけれど、頬にいつもより朱が差してるようにも見える。

 恥ずかしがっている? でもならどうして。

作品名:【ジンユノ】SNOW LOVERS 作家名:SORA