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【ジンユノ】花びら一枚の記憶

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「あのね、わたし、入学式の間、舞台の反対側の上にある音響ブースにいたの。式典で流す音楽の調整や、開始前アナウンスなんかのお手伝いをしてたんです。でも、ブースからも式の様子見えるし、マイクの音も聞こえてたから。……ちょっと遠目だから自信なかったけど、ジンくん、どことなく印象的だったし、先輩達に聞いてた通りだなって思って覚えてて……」
 成程、道理で気付けなかった訳だ。まさかそんな上にいたとか。いや、しかしだとすると彼女は――
「え。じゃぁ、君、新入生じゃなくひょっとして先輩!?」
「あ、はい。一応、そう……ですね。えっと、ちっちゃいし、子供っぽいから制服着てないと小学生に間違われたりしちゃいますけど、これでも二年生……です」
 そういうと、さっきとは違う、照れたような、困ったような、そんな顔になる。それがまた可愛くて。
「や、やっぱり見えない、かな? まぁ自分でも二年に進級したてなので、あんまり先輩だってピンとこないんだけど」
「え、でも、初等部に通ってた間、君の事見た事ないよ僕。学年違ってても顔くらい――」
 きっと一目でも見たら判った。今の僕は自信を持ってそう言える。例えそれが夢とは違う、もっと幼い姿でもきっと。
「あ、わたしこの学校には中学からなんです。初等部は通ってないので……」
「ああ、それで……」
「でもわたし、ジンくんの事は知ってたんですよ? 先輩達が話してたから。今度自慢の弟が入学してくるって。それで、どんな子なのかなぁって、なんだかとっても興味が湧いてたの」
「え……先輩って、ひょっとして兄貴らを知ってるの?」
「ハイ。あ、えっと、わたしあの、生徒会でお世話になっていてそれで……」
 なんてこった。僕より先に、兄貴らと知り合ってたとか。どうして教えてくれなかった。いや、判ってる、そんな事兄貴らに判る訳もない。でも、無駄に妬けるこの気持ちをどうしてくれようか。――妬ける?
「生徒会室で先輩達がジンくんの事、生意気だけど結構負けず嫌いで頭もいいから、何か任せると期待以上に応えてくれる有能な人材だし、入学したら生徒会に引っ張ってきたいって、話してるの横で聞いてて。なかなか他人に本心見せないし人付き合い悪いところがあるけど、ちょっと捻くれてるだけで根は素直で可愛いとこある奴だから、入ってきたら仲良くしてやってって……」
「……あいつら、人のいないとこでなに悪しざまに勝手な事言ってくれてるかな…っ」
 しかもよりによって彼女の前で! 僕が思わず渋面を作ると、目の前の少女が慌てたように手を振って、口元を押さえた。
「ごっ、ごめんなさいっ! 生意気とか捻くれてるとか、余計な事までそのまま言っちゃいました。わたしったら、なんて気が利かない……どうしよう、ジンくん、気を悪くしちゃったよね」
 眉尻を下げ困惑した顔が泣きそうなあの顔にだぶって見えて、僕は慌てて首を横に振る。
「いやそんな。そもそも君が言った訳じゃないっ、気にしないで……」
 すると彼女は、まだ少し申し訳そうな顔で、でもちょっと笑った。
「……優しいんですね」
「えっ!? いやそんな……」
 僕が? そんな事、言われ慣れない。意識した事もなかった。逆ならあるけど。僕は多分、優しくなんか……。でも、この子の手前、それを完全に否定したくない自分がいる。
 するとまた、くすっと可愛い声で笑う。
「……良かった。ジンくんが優しい人で。あのね、実はね、人付き合い悪いって聞いて、やっぱり人見知りさんだったりするのかなぁって、何だかわたし、勝手に親近感持ってしまってて。会えたらお話してみたいけど、うまく話せるか自信なくて。それでも何時かお話しする機会出来ないかなって思ってたんだけど、まさかジンくんの方から話しかけてきてくれるなんて。吃驚しちゃいました」
「えっ、あ、あれは……そういうつもりじゃ……いや、その……急に声掛けて、驚かせたならごめん……」
 僕の知らないところで運命ってやつは回っていたりするんだろうか。僕はドキドキして、嬉しいのと戸惑いで、やっぱりうまく話せない。折角話したいとか、思ってもらえてたらしいのに。僕も君と、話したいのに。
「いいえまさか! 嬉しかったの」
 そうしてはにかんで笑う。ああ、この控えめな笑い方も、やっぱり可愛い。