機動戦士ガンダム IFU 第一章
「エイラー隊長。」
「ガルメア!ヒューガ!良く無事で帰ってきてくれた!」
エイラーは二人を笑顔で迎えた。だが、パイロットに選抜された彼ら以外のメンバーの姿が無い事に気付くと、その顔から笑顔が消えた。
「他のパイロット達は・・・?」
二人とも答えずに俯いている。彼は悟った。
「・・・そうか。なに、お前らのせいじゃない。・・・それに――」
彼は表情を引き締めた。
「――戦場ではこれが当たり前と思った方が良いぞ。これからも誰かが命を落とすかもしれん。俺かもしれんし、お前達かもしれん。戦場にいるという事は、その危険を受け入れるという事だ。もし、この先死んだ者の事を哀れみ続けるなら、それは彼らに対する侮辱にも値するだろう。」
ガルメアとヒューガは依然として俯いたままだ。そんな彼らに対して、エイラーは引き締めていた表情を崩し、穏やかな表情になる。
「まぁ、今日はゆっくり休め。お疲れ様。」
彼はポンッ、とガルメアとヒューガの肩を叩くと、その場を後にした。
「艦長。作戦メンバー、帰艦しました。・・・クウォルド、アーサ、ジョン、スメア、メルテリア・・・計五名が戦死したとの報告です。」
「・・・分かった。」
ニーナからの報告に、ダイタスは少し顔をしかめる。
“せめて永遠の安らかな眠りを・・・”
彼はそう願うと操舵士へと声をかけた。
「フロウ。整備士からは航行にはまだ支障が無いレベルの損傷だとの報告なんだが、ここまでどうだ?何か問題があるのなら、そこの修理を急ぐ様指示を出すが。」
操舵士のフロウ・メッセは真顔で答える。特に怒っている訳でも無い。彼は表情を変化させる事があまり無いのだ。
「問題無いと思います。このままの状態でも十分本部に戻れます。ですので、修理のペースもこのままで構いません。」
「そうか、分かった。――アターシャ。敵の領海を出てから、追っ手は来てはいないな?」
「はい。どのレーダーにも敵影はありません。」
レーダー担当のアターシャ・マラルは即答した。
「よし、ニーナ。全艦に通達。一時間後に本部に向けて移動を開始する。各艦は艦の状態報告を急げ。」
「了解。――全艦に通達。一時間後に本部へ向けて移動を開始します。各艦は、艦の状態報告を急いでください。」
「エイラー!無事だったか!」
リーフとエイラーはがっちりと握手を交わした。両者とも体格がとても良い為、こうして二人が並ぶと、かなりの存在感がある。
「そっちこそ、無事で何よりだリーフ!」
「聞いた所によるとそっちの作戦メンバー、数名が亡くなってしまった様だが・・・」
リーフが表情を少し険しくして聞いた。
「まぁ・・・な。」
「残念だったな・・・。かなり有望なやつらだったと聞いた。」
「仕方無いさ・・・神様は時に残酷になるもんだ。」
エイラーは苦笑した。
「本部に戻ったら葬式だ。その時はせめて・・・皆で送り出してやろう。」
「ああ。」
リーフはふと、思い出した。
「そういや、ウルはどうしたんだ?」
「ん・・・そういや見ないな。さっき通信したんだが・・・自室か?」
「そう思ってさっきウルの部屋へ行ってきたんだがな。居なかった。」
「んーむ・・・艦長に聞きに行くか?」
「それが一番手っ取り早いか。」
彼らは並んで艦橋へと向かい始めた。
艦内部の通路はそこまで狭く無いはずなのだが、彼らが並んで歩くと、やけに狭く見える。
作品名:機動戦士ガンダム IFU 第一章 作家名:ネクス