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機動戦士ガンダム IFU 第一章

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第一章 第二話「混迷の戦場へ」



 ビリアス民主主義共和国軍の誇る新型機動兵器『MS』、これらの内、試験機に当たる『MSGM』がユーラシア連邦国軍の脅威に晒されている。ユーラシア軍は『MSGM』の強奪作戦を実行し、現在ビリアス軍と戦闘状態にある。

 彼、シュン・アラクはその『MSGM』の内の一機『MSGM-01 インフィニティ』のコックピット内に居る。
「ごめん兄さん・・・俺も行くよ。この戦場に・・・」
 今は“亡き筈の”兄への届かぬ報告をすると共に、握りしめた胸のペンダントが計器の証明の反射光で光る。
「生きてたら・・・きっと反対してるだろうね・・・兄さんは。」
 彼は微笑を、その端整な顔に浮かべる。

 だが、その表情は何処か寂しさを感じさせるものだった。








「全員目を塞げ!対ショック、対閃光防御!味方の支援爆撃だ!」ウルがそう叫ぶと同時に“『MS』強奪作戦メンバー”の全員が地面に伏せ目を塞ぐ。この光景に、攻撃開始直前であったビリアス軍本部第二倉庫配属陸軍戦車部隊の隊員達は一瞬動揺した。

 そして、それが命取りとなるのだった。

「直上に敵戦闘機・爆撃機多数!」
「何ぃ?!」
 強奪作戦メンバー支援の為に輸送機と共に飛行していた戦闘機隊、これらはユーラシアの最新鋭機であった。大気圏付近までの接近をも可能とした性能を持ち、更にステルス機能の有効化・無効化の切り替えを自由に行う事を可能とするシステムが搭載されており、彼らが降下を行うまではあえてステルス機能を無効化させていたのだ。その後輸送機をある程度基地から離れた空域まで護衛し、ステルス機能を有効化、この場まで引き返して来たのである。友軍と戦車部隊の居る場に到達するより以前に、大気圏付近まで高度を上げ、直上にて自由落下で降下した。この飛行から察するに、ユーラシアの最新鋭機は、燃費の面でも優れている様である。
 かくして動揺してしまっていた倉庫配属部隊の隊員は、敵支援の目視での確認を、自分達の部隊の直上でしてしまったのである。既に爆撃は開始されていたので、戦車部隊は爆撃を避ける事も出来ず、当然応戦をする間もなく壊滅した。
 
 爆散する戦車。爆撃を直で受けなかった戦車も、他の戦車の爆発に巻き込まれる。
 
 壊れきった戦車の中で、ほぼ虫の息の分隊長が辛うじて生きていた通信機を手にとる。

「こちら...戦車部隊...敵の奇襲爆撃により...部隊...壊滅...」

 次の瞬間、分隊長は息絶えた。









「せ、戦車部隊、壊滅っ!」
「何ぃっ?!」倉庫担当士官はさらに焦る。「せ、戦闘機隊は何処に行った?!すぐにこの倉庫周辺に展開して守らせろ!!」
「そんな無茶言わないでください!!」
「何故だ?!」
「部隊は、全て出撃しているではないですか!今から引き返させても...とても間に合いませんよ!」

 士官は言葉を失った。

「中佐!ご指示をっ!」
 すがる様に次の指示を求める兵士・・・だが士官は指示を出さなかった。
 
 否、出せなかったのである。










 倉庫のすぐ手前にある事務所の入口にて、強奪作戦メンバー達は一度立ち止まった。
「エイラー隊長の班はBルートから内部へ!我々の班はCルートから入る!警戒態勢を厳に!行くぞ!」
 ウルの指示と共に作戦メンバー達が二手に別れる。
「前方に敵!」敵に気づいたメンバーが声をあげる。それと同時に他のメンバー達が倒れた鉄製のテーブルの影へと飛び込み隠れる。
 だが、「先に行く!援護しろ!」ヒューガだけが、怯む事なく進んで行った。
 残ったメンバーが慌てて援護する。
「全く!いつも無茶すんだからあいつ!」ガルメア・ブートは苦虫を噛み潰した様な表情をしながら怒鳴った。
「そう言いなさんな!」エイラー・バンクス隊長が思わず笑みを浮かべながら言う。
 今回の作戦は、ダガール隊とバンクス隊との共同で行われている。作戦の主導権はウルが握っているが、これはエイラー自身が望んだ事である。
「区画確保完了!」ヒューガが告げると同時に残っていたメンバーが続く。
「良くやった!」エイラーはいちはやくヒューガの元へと辿り着くと、彼の背中を軽く叩いた。「さぁ、どんどん行くぞ!」









「作戦メンバー敵倉庫に突入成功!」
「よし!」ダイタスがやや細めの目を見開く。「全艦に通達!応戦しながら後退開始!これより作戦の最終段階に移行する!」
「は!」ナビゲーター兼通信士であるニーナ・クロイツはすぐさま全艦への通達を行なった。「作戦中の全艦へ。応戦しつつ後退を開始してください。これより作戦の最終段階へ移行します。」
 ダイタスはニーナの全艦への通達が完了するのを待ってから言った。
「本艦は反転し、部隊の後方に出る。他の艦が目標地点での反転を完了次第、最大船速へ。そして現戦闘海域を離脱する。現在作戦は予定通りに進行しているが油断は禁物だ。これからこの作戦は一番重要な局面を迎える。気を抜くなよ!」
「了解!」クルー達の表情が引き締まる。
「おもーかーじ!」
 操舵士が掛け声と共に大きく舵をきった。

 艦が右へと進む方向を変え、反転を開始した。









「守備兵隊、現在事務所にて敵部隊と交戦中!中佐!ご指示を!」
「・・・ぬぅ・・・。」士官は苦渋の表情を浮かべ、口を開いた。「このままでは援軍はとても間に合わん・・・。倉庫配属部隊全隊員に通達!直ちに倉庫より退却せよ!」
「な・・・」周りに居た兵士達全員が自分の耳を疑った。一瞬静まり返ったのち、兵士の一人が言い放った。
「敵に新型兵器を奪われろと言うのですか?!・・・その命令には従えませんっ!私はこの命尽きるまで戦います!」
「自分もです!」他の兵士達もそれに同調し、騒がしくなり始めたのだが・・・
「黙れっ!」士官がこれを一蹴した。

 そして一つ、大きくため息をついた後に言った。

「私が残り、この倉庫を爆破する。ここまで状況が悪化したのは指揮官である私の責任だ。」
「・・・で、ですがっ・・・それでもっ、自分は――」兵士は、尚も食い下がろうとしたが・・・
「私はどの道この爆破で死ぬ。逆らって残ろうとするものならば、私は躊躇無く撃ち殺すぞ?嫌ならとっとと倉庫から出て行け。」この一言に、士官の考えを捻じ曲げる事は不可能だと悟り、口を閉じた。

「もう一度言うぞ。倉庫配属部隊全隊員に通達。直ちに倉庫より退却せよ。」