機動戦士ガンダム IFU 第一章
「これは一体・・・」動揺するヒューガ。
「敵が消えた・・・」ガルメアも思わず困惑の声をあげる。
「待ち伏せをする様なポイントなど、ここには無いはずだが・・・。」エイラーが辺りを警戒しながら言う。「さらに分散して進むか・・・スナイパー二名と、スナイパーの護衛要員として二名は二階へ。俺達が一階から進む。ルートの安全の確保と連絡を頼む。」
「了解。」
応答すると同時に、班がさらに二つにわかれた。
「どうも嫌な予感がするな・・・まぁ、ハナから全てが上手くいくなんて思っちゃいないが・・・」エイラーは少し間を置いてから、ライフルを構えて駆け足で進み始めた。一緒に一階に残っていたヒューガとガルメアがそれに続く。
《前方クリア。敵影無し。》二階のメンバーからの無線が入る。
「了解。」
「まさか、退避した・・・なんてこったは無いよな・・・」ガルメアが言う。
「新型機動兵器を置いて?流石に無いでしょ・・・」ヒューガが答える。
ガルメアは顔をしかめた。
「分かってるよ・・・」
彼らは奥へと進んで行った。
「左舷副砲二番大破!砲塔付近火災発生!」
「消火急げ!艦の損傷率は?!」ダイタスが問う。
「損傷率は約八%です!現状で航行には支障無し!」
「許容内の損傷だな。味方の状態は?」
ニーナがこれにすぐ答えた。
「バリアラが撃沈され、レーヴェが戦線を離脱!キアが損傷率二十%を超えています!その他の艦は、損傷はあるものの、まだ余裕はあるとの事です!」
ダイタスはすぐさま指示を出した。
「付近の艦にキアを援護させろ!キアには戦線の離脱を命じる。」
「了解!」ニーナが通達に入ろうとしたが、
「待て。追加だ。」ダイタスがそれを止める。「余裕のある艦は、なるべく陣形を崩さない様注意しながら後退を続けつつ、損傷率の高い艦を援護せよ。・・・これも頼む。」
ニーナが頷き通達に入る。
「作戦中の全艦へ。現在キアの損傷率が二十%を超えており、危険な状態です。付近の艦はキアの援護をお願いします。また、キアには戦線の離脱命令が出ました。直ちに当戦闘海域より離脱してください。損傷率が少なく、余裕のある艦はなるべく陣形を崩さない様注意しながら後退を続けつつ、損傷率の高い艦を援護してください。」
キアの艦長から返答の通信が入った。
《こちらキア。了解。お気遣い感謝します。直ちに当海域より離脱します。》
「オールクリア!目標確認!」ガルメアが告げるとほぼ同時に、ウルの班も到着した。
「よし。」それを確認したエイラーが指示を出す。「援護の人員はFルートより脱出!パイロットはすぐに乗り込むんだ!」
ウルも自分の班に同じ様に指示を出す。
「援護の人員は打ち合わせの通りに脱出。パイロットはエイラー隊長の班のパイロットに続いて乗り込め。」
エイラーを含め、援護に回っていたメンバーが味方のヘリが待つ地点への移動を開始し、倉庫より出て行った。
エイラーは一度立ち止まってから、大きな声で言った。「艦に戻ったら皆でまた飲もうや!」そう言い終えると、他のメンバーに続いて倉庫から出て行った。
パイロット達も、敵が最終確認を終えた新型機動兵器『MSGM』へと向かって走り出した。
その様子を見守っていたガルメアだったが、ある異変に気付いた。
パイロット達の進む先のコンクリートの地面の色が、薄く赤色に変化したのである。
「止まれっ!!」彼は叫んだ。ウルとヒューガは即座に足を止めたが、残りのメンバー達の反応が遅れた。
そして薄かった赤色が一瞬にして真っ赤に染まり、爆発が起きた。
「――っ!?」
反応が遅れたメンバー達の命が爆発にさらわれた。
作品名:機動戦士ガンダム IFU 第一章 作家名:ネクス