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機動戦士ガンダム IFU 第一章

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「・・・何とか・・・阻止は出来たか・・・」士官は倉庫内の司令室(『MSGM』の保管場所のすぐ隣)から倉庫内を見渡す。次々と誘爆を起こして行くこの倉庫内で、彼から見えるのは、炎に包まれる『MSGM』に、横たわる敵兵の死体だけ。
 今頃はここに居た兵士たちも退避を完了しているだろう。そう考え、彼は安堵した。
 この国を守る事が、家族を守る事に繋がる。その為なら、自分の命など喜んで差し出す。
「失敗したな・・・全く。何故あんなに焦ってしまったんだか・・・」そう言いながらも、彼の顔には微笑さえ浮かんでいた。

 守りきった。敵の脅威から。この国の為に。家族の為に。

 彼は胸ポケットから煙草を取り出し、ライターで火を点け吸い始めた。
「これが最後の煙草か。もっといいもん買っとくんだったなぁ・・・。まぁ・・・残ってるだけマシか。」
 煙草をくわえて、思いっきり呼吸をする。
 鼻、口の両方から煙が出た。
 心地良い。決して良い煙草じゃ無いはずだが、とても美味く思える。大業を成し遂げた事により、今、自分の感じている達成感によるものなのか。

「こういう終わり方も・・・悪くは無いな・・・」



 だが



 次の瞬間彼は



 決死の策であったこの最後の手が



 失敗に終わったことを知らされる。



 突如大きな地響きが起きる。
 


 そして・・・



 燃え盛る炎の中、三機の『MSGM』が立ち上がった。


 
「そんな・・・・・・馬鹿な・・・」



 絶望に襲われた彼の真上の天井が、崩れ落ちた。










「自爆か・・・残りの三機は諦めよう。やむを得ん・・・・・・作戦通り行くぞ!脱出した後、ポイントCで本隊と合流だ!」ウルは『MSGM』のOSを起動させながら指示を出した。
《畜生っ・・・クウォルド・・・アーサ・・・ジョン・・・敵は取ってやるからな》通信機のスピーカから、ガルメアの声が聞こえてくる。
「ガルメア、冷静にな。今熱くなりすぎると敵に落とされるぞ。」ウルが声のトーンを一つ落として言う。
《分かってます。あいつらの為にも、こんな所で死ねませんから・・・》
 『MSGM』のOSが完全に立ち上がった。それまで若干不安定だったシステムの動作が安定化する。
「各種計器異常無し。核分裂反応異常無し。どうだ?」
《こっちも大丈夫です!》ヒューガが応答する。
《行けます。》ガルメアが一拍遅れて応答する。
「よし、行くぞ。」
 三機の『MSGM』が倉庫から飛び立った。









「各種計器異常無し・・・核分裂反応異常無し・・・行けます。」
《シュン・アラク、この先の戦況は、お前の働きに掛かっている。》
 倉庫の中央処理室(『MS』の管制室のような物)からアデスはシュンにそう告げた。
「はい・・・!」シュンは答えると前を見据えた━━━が、その後すぐに通信画面越しのアデスに視線を移し、問いた。
「気になってたんですけど・・・何故、人型の兵器にしたんですかね・・・非効率では・・・?」
 アデスはその質問をされる事が分かっていたかの様に微笑を浮かべた。
《悪いな。その質問については最高機密だ。まだ言えん。・・・・・・だがその内話す事になるだろう。》
「え?」思わず出たシュンの疑問の声にアデスは答えなかった。
《さぁ、行くんだ。》そう言うと、アデスは一方的に通信を切った。
《『MSGM-01 インフィニティ』、発進シークエンスに入ります。『MS』の進路上に居る作業員は退避してください。》アナウンスが入った。
 
 シグナルが赤から緑へと色を変え、発進準備が整ったことをシュンに伝える。
 
 シュンはこれ以上の追求を諦め、再び前へ視線を戻した。

 そして、大きく深呼吸をし、告げた。

「シュン・アラク・・・インフィニティ、行きます!」
 
 スロットルレバーを前に倒すと共に、機体から出た核の細かい粒子が、まるで戦場に赴く騎士を華やかに送り出す紙吹雪の様に辺りを彩った。
 
 そして、まるで神の意志によって現世に現れた騎士の様なその機体が、戦場の大空へと勢い良く飛び立って行った。