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機動戦士ガンダム IFU 第一章

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第一章 第三話「兄の亡霊」



 デア・ヨナは、ビリアス民主主義共和国軍デア隊隊長であり、隊員からの信頼は勿論の事、アデスからの信頼も篤く、軍内においても一目置かれる程の存在である。
 今回の戦闘は、前回の任務が終了した直後でもあった為、彼の部隊は出撃していなかった。だが彼はたった今、自分の部下達へと連絡を入れ、そして司令室内の士官へ伝言を頼んだ。
「アデス隊長に伝えてくれ。我々の部隊も出撃する・・・これは隊員の総意だ。そして、我が隊は支給された兵器を今回より実戦に導入する。」
 軍内でも一目置かれる存在であるデアは、そう兵士に言うと本部司令室を後にした。









 『MS』強奪作戦メンバーは、ビリアス本土から脱出し、合流地点を目指して海面を飛行していた。この海域は味方の偽装巡洋艦(小型漁船に偽装)が多数、本物の漁船の集団に紛れている。
「4時の方向より戦闘機多数出現。距離は数える程も無い。・・・ちぇっ」
 ヒューガが苦々しく言った。
《あれだけ大胆にやったんだ。気付かれるよそりゃ。》
 通信画面は見なかったが、スピーカーから発されるガルメアの声から彼が苦笑いをしている事を読み取れる。それが分かっただけに、ヒューガは顔をしかめた。
《ほら、来るぞ。》
 ウルは至って冷静で、彼らのやり取りをこの一言で止める。
「了解。」
 ガルメアは即座に切り替えて表情を引き締め、ヒューガは顔をしかめたまま返答した。
 赤、橙、青の各機体が太陽の光を受け光り輝きながら、敵の戦闘機隊へと向かって行く。

 ウルが乗っている赤の機体『MSGM-03 バビロン』は、主に近~中距離での戦闘を特に得意とした機体である。
 『MSGM』は基本的にオールマイティーな形式なのだが、各機体はそれぞれさらに得意とする戦闘タイプを持つ。
 この『バビロン』が持つビームライフル(バックパック中央の上部に装備)は、他の機体に比べて威力がとても高い。ただし、距離による威力の減衰率も高い。近~中距離の機体であるバビロンでしか実用性を発揮できないものである。
 ビームサーベルは腰に二本装備しており、連結して使用することが可能である。勿論、それぞれ単体での使用も可能である。
 また、肘と膝に伸縮式ビームサーベルを持ち、手に持ったビームサーベルと連携させる事で(この場合ビームサーベルは連結無し)、両手両肘で考えると、最大六連撃が瞬時に可能である。
 対『MS』・戦闘機戦だけでは無く、対艦船にも高い性能を発揮する。
 肩に二基の対艦バズーカを持っており、このバズーカはビームと実弾の切り替えが可能である。
 勿論、頭部バルカンは全『MSGM』に標準装備されている。

 ウルが急制動をかけ、バビロンがその場で静止する。そして肩の対艦バズーカを展開し、ビームが発射された。









 正面に捉えた『MSGM』の三機が一気にこちらへと迫ってくる。想像以上の機動性にビリアス軍本部直属第八戦闘機部隊隊長は思わず怯んだ。だが、すぐに切り替えて隊員へと声をかける。
「『MS』接近!来るぞ!」
 だが返事は隊員の内、半分程度しか返って来なかった。
 いち早くこちらに向かってきた赤の『MSGM』による大型のバズーカ砲によって、攻撃に反応出来なかった味方機が撃墜されたのである。
「散開っ!」
《りょ、了解っ》
 慌てながらも残った戦闘機が散開する。だが、他の二機にはまだついて行けるが、部隊の半数以上の戦力を奪ったあの赤の機体にはついて行く事が出来ない。
“今日、つい先程、初めて実機に乗ったばかりとは到底思えん・・・いや、熟練のパイロットでもあそこまで辿り着けるのか・・・”
 隊長はその赤の機体の動きに圧倒された。
 すると、突然その赤の機体が急に動きを止めた。すかさず数機が連携する為の体勢をとりながら突っ込んで行く。そして、赤の機体が急降下を開始する。
「まて、罠だ!近寄るな!」隊長は勘付いて突っ込む事を止めようとしたが、遅かった。
 赤の機体に続いて急降下を開始した戦闘機が、突如として海面より撃ち上がった巨大なビームに撃墜された。それと同時に激しいビームの砲撃が海面からどんどん撃ち上がってくる。
「ーっ?!くそっ・・・偽装艦か?!」
 
 既に部隊は壊滅状態。隊長は苦渋の判断をせざるを得なかった。

「・・・退却するぞ・・・全機現戦闘海域を離脱。」

 だが、天は時に非情とも言える様な気まぐれを起こすものである。

《たっ、隊長っ!!周囲に敵戦闘機部隊がっ!!》

 隊長は自分の体に、血の気が引く様な感覚を覚えた。
「?!・・・なん・・・だと・・・」
 ビリアスに対する陽動作戦に当たっていた、ユーラシアのフルデック戦闘機部隊と、彼らは鉢合わせになってしまった。

 四方からこちらに向かってくる敵の戦闘機部隊。

 隊長が自失したとほぼ同時に、ビリアス軍本部直属第八戦闘機部隊は壊滅した。










 フルデック戦闘機部隊隊長、リーフ・フルデックは、『MS』強奪作戦メンバーをまとめる隊長へと通信回線を開いた。
「こちらフルデック戦闘機部隊隊長、リーフ。大丈夫か?」
《大丈夫だ。海上の多数の味方巡洋艦に、空には味方戦闘機部隊。これでヘマをしたら大恥だ。》
 ウルの返答には、余裕さえ見える。
「はははっ。敵さんも運が悪かったな。こりゃ。」
《ふふっ・・・まぁ、ありがとう。感謝する。》
「なに。いつも助けてもらってる礼だ。この位屁でもない。」
 そういい終えると、リーフは自分の部隊の隊員へと通信を切り替え、指示を出した。
「よし・・・思わぬ戦闘だったが、気を取り直して艦に戻るぞ。」
 隊員達は威勢良く返答する。
《了解!》
 彼らの戦闘機は、トルゼスを目指して次々と飛び去っていった。








 ウルの指示によって艦隊の指揮を任されていたトルゼス艦長のダイタスは、強奪に成功した『MSGM』を目視で確認したが、数が足りない事に気付いた。それと同時に、儚い隊員の命が戦場に散った事を悟り、その胸を痛めながらも指示を出していた。
「全艦、戦闘海域から離脱したな。追っ手が来ない内に、立ち去るぞ。偽装艦は部隊の後ろに!『MS』の収容を急――」
「艦長!味方の偵察艇より報告です!」
 ニーナがダイタスの声を遮った。
「何だ?」
「一機の『MS』がこちらに向かっているのを先程、ビリアス本土から二百メートルの地点で確認したとの事です!」
「・・・収容急げ!この件は隊長に指示を仰ごう。伝えてくれ。」
「了解!」

 ダイタスは直感した。彼が来た・・・と。








《味方の偵察艇からの報告で、一機の『MS』がこちらに向かっているのを先程、ビリアス本土から二百メートルの地点で確認したとの事なのですが・・・》
「ふむ・・・?」
 ウルはすぐに勘付いた。彼だ、と。
《艦長がこの件に関して、隊長にご指示を頂きたいとの事です。》
「分かった。そいつの対処には私だけで良い。」
 ニーナからの報告に、ウルはすぐに答えた。
《えっ?!・・・ですが、危険では?!》
 不安げな表情をするニーナに、彼は構わず続けた。